I’M FLASH! [DVD]/藤原竜也,松田龍平,水原希子
¥4,410
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新興宗教団体"ライフイズビューティフル"の若き三代目教祖、吉野ルイ(藤原竜也)は、空虚な毎日を過ごしていました。ある夜、流美(水原希子)に出逢い一瞬で彼女に魅了されます。2人でドライブしますが、バイクと衝突。ルイは奇跡的に軽傷ですみますが、バイクの男性は即死、流美は生死を彷徨います。事故のことを知った教団の幹部であるルイの母(大楠道代)と姉(原田麻由)は教団の存亡を危惧し、事故のもみ消しに躍起になります。ルイを南海の孤島へ逃避させ、警護のため3人のボディガード(松田龍平・仲野茂・永山絢斗)が雇われます。一方、"死"に直面し、初めて生きる意味を知りったルイは教団を辞める決意をします。それを知ったルイの母は、ボディガードたちに新たな仕事を...。


個々のシーンの繋げ方が雑なのかもしれません。全体が、ギクシャクした感じに覆われています。


教祖という立場に置かれ、神様業で家族を支えているルイ。信者を前に話をしている様子が描かれますが、教祖としての活動の状況とか、教団としての活動、教義の内容などについては、ごくあっさりとしか描かれていないので、教団の危険性も、教祖としておかれることの苦しさも、伝わってきにくい感じでした。


教祖たる覚悟も矜持もあまり感じらないのは、ただ単に跡継ぎとなる立場に生まれてきたというだけで教祖に据えられたから...というのは、分かるのですが...。幼い頃から教義を叩きこむとか、教祖としての帝王学を仕込むとか、将来を見据えた教育をしようとはしなかったのか...。教育をしても失敗したのか...。2代目ではなく、祖父の代からの3代目なのですから、ルイが子どもの頃から教団をやってはいたわけですよね...。違うのでしょうか...。


ルイの言動もフラフラしていて、よく分かりません。一つの人格としてまとまった感じがしません。自分の置かれた立場に納得できていない状況にある者として、それはそれでアリだと思うのですが、それなら、様々に揺れ動く背景をきちんと描いてほしかったです。何も背景が描かれない中で、言動が揺れていると、ただ単に人物設定が甘かっただけのようにしか思えないのですが...。


彼の家族。教団を維持するために、何度か教祖の首のすげ替えをやっているようですが、こんなにコロコロ変えていたら、破綻するのもそう先のことではないでしょう。何故、もっと"教祖をそれらしく育てる力"を持とうとしないのか、よく分かりませんでした。


ほとんどお飾りでトップに据えられたようなルイ。自分の意思とは違うところで、かなり犯罪っぽい(というより、バレれば完全に犯罪なこと)をさせられ、本当ならもっと様々に葛藤してもいいような...。


途中で、ルイは、いろいろ語りますが、その語りも意味があるような、ないような...。何だか、もっともらしいことが安っぽい表現で綴られているだけなような...。心に響いてきません。それなりに儲けている教団のようですから、その教祖たる者、それなりに胸に響くことを言って欲しかったような...。


まぁ、中身がないけれど、飾られた言葉の羅列に熱狂し、踊らされ、そこにはまっていく...というのも、カルトチックな新興宗教ではありがちなこと。そう考えれば、ルイは、典型的な"怪しげな教祖様"ということになるのかもしれませんが、それにしても、カリスマ的な要素が弱いような...。


殺し屋たちも、多少、無理を言われても教団の指示に従います。ルイに対する同情のようなものも見せるのですから、ルイと組んで大逆転の展開もあり得たのではないでしょうか。教団の指示を受け入れる方向で行くのなら、それはそれで、何らかの葛藤をしっかりと見せて欲しかったです。


別にアクションをウリにしている作品ではないはずなのですが、ほとんど銃撃戦しか印象に残りませんでした。それなりの演技陣も揃えられているのに、それぞれの力が活かされていないし、それも残念です。