アメリカン・ウェイ [DVD]/出演者不明
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ベトナム戦争当時、古ぼけたB-29に乗り込み、TVメディアでゲリラ戦を遂行する特殊部隊"SM-TV"がいました(もちろん、そんな史実はありません)。主なメンバーは、"船長"デニス・ホッパー)、ずーっとマリファナ吸っててへろんへろんな"操縦士"、天才エンジニアの"ドク"、メカ車椅子に乗り始終具合が悪そうな"エース"、ミサイルの上でヨガやったり黒人とマッサージしあったりしているベトナム人青年、地上と機内を行き来しているレポーターの"サム"。彼らは、1986年になりようやく戦地から帰還。B-29内のスタジオから全国ネットの番組を次々電波ジャックし、人気を博していました。そんな彼を目の敵にしていたのが、大統領になろうとしていたタカ派女性議員、ウェスチングハウス。彼女が当選すれば戦争は必至。それを阻止しようと"SM-TV"の面々は、B-29で全米を飛び回り、彼女のキャンペーン番組を次々に電波ジャックしていきますが...。


本作に登場するキリスト教系TV局、WITVで歌われる、視聴者から寄付を募るために「キリスト様にお金を送りましょう」と歌われる"Send Jesus Some"が、なかなかの傑作です。


ラスト、まぁ、お約束通り、"ロックな精神"が勝利を収めるのですが、敵対するタカ派議員を失脚させるネタが、あまりにあまり...。ここは、やはり、本作のキモだと思います。ブラックユーモアを交えながらも、議員の主義主張の矛盾や問題点を正面から衝いて欲しかったような...。


本作が制作されたのは、レーガン大統領の頃。その後、"9.11"のショックもあって、ますます右に舵を取っていき、イラクでの戦争も泥沼化していくわけですが、それを推し進めたブッシュもキリスト教原理主義者たちの支持を受けて大統領になっています。現在のオバマ大統領は民主党。まぁ、基本的に、共和党の大統領に比べれば平和的なのでしょうけれど、それでも、キリスト教原理主義者たちの力は、アメリカ国家にしっかり根付いているわけで、アメリカという国を考える上で無視できない勢力だと認識すべきなのでしょう。


そう、ここに登場する"アメリカ人らしいアメリカ人"は、田舎で農業を営み、敬虔なキリスト教信者で、"LA"と言われてもそれがロサンゼルスのことだと分からないような"イージー・ライダー "に登場するような"典型的"アメリカ人なのです。


本作は制作国がイギリスになっています。ここまで宗教を攻撃した作品をアメリカで制作というわけにはいかなかったのでしょう。本作で描かれている通り、キリスト教原理主義国家ですから...。もっとも、日本で、ここまで、日本国家の在り方を批判する映画のを作って大きな劇場で公開することができるか...ということになると、かなり危うい感じがしますので、この点において、アメリカを非難することはできないのでしょう。


かなりの力を持ち、国家体制を支えている彼らを茶化すことは、相当に勇気のいること。それでも、そこに挑戦し、"政治"と"宗教"と"カネ"。その三位一体の関係を抉っているところが見事。


古ぼけた戦闘機にむさ苦しいオジサンがずらり。この画面は、なかなか見苦しかったりしますし、全体にチープな感じが漂う作りの粗さが目立つ作品でもありますが、一度は観ておきたい作品だと思います。