穴 LE TROU HDマスター [DVD]/ジャン・ケロディ,フィリップ・ルロワ,ミシェル・コンスタンタン
¥3,990
Amazon.co.jp


パリのラ・サンテ刑務所で1947年に実際に起きた脱獄事件を描いています。実行犯の一人、ジョゼ・ジョヴァンニが1958年に発表した小説を原作としています。また、同じ事件の仲間であるジャン・ケロディが、"3度脱獄した男"ロラン役で出演しています。


最年長のリーダー格のボスラン、脱獄のプロのロラン、無愛想なマニュ、女たらしのジョーの4人が収監されている房にガスパールという未決囚が入れられます。4人は、地下に穴を掘り進める脱獄計画を立てていて、新入りのガスパールに対して警戒していたものの、話し合いの結果、彼を仲間に入れることにします。そして、ガスパールを含めた5人は、ひたすら穴を掘り進め...。


原作の作者が実際に服役していたということもあり、囚人たちの日常がリアルに伝わってきます。


脱獄のための穴掘りについては、いくら刑務所内で工事をしていたからって、あれだけの大きな音を出せばすぐ分かってしまうでしょうにとか、ロランは何度も脱獄しているのだからもっと厳重に見張るべきでしょうにとか、数々の?を付けずにはいられませんが、まぁ、60年以上も前のオハナシ、昔は何事ものどかだったということなのでしょうか...。


服装は自由だし、規律もゆるそうな感じだし、囚人と看守の遣り取りも自然体。


監視する方ものどかなら、脱獄する方も大雑把。練りに練った計画を基に満を持して決行...というよりは、行き当たりばったりな感じがします。刑務所の構造も十分に把握できておらず、地下水道に出たはいいものの、その構造についても事前の調査はされていなかった様子。


ひたすら力技と運の良さで突き進むという感じです。イマドキのあれこれ考えられ準備をした上での頭脳的な脱獄とは違い、肉体派で、武骨な雰囲気です。

この力技の穴掘りが誰にも知られずに進められていく...という部分については、眉に唾を付けたくもなります。(この部分も実話なのだとしたら文句言えないわけですが...)それでも、展開の巧さか、見せ方の巧さか、彼らの計画が看守にばれるかどうか、ハラハラドキドキしました。


そして、ガスパールの行動。そこに至る前に面会の人が現れる場面が入れられることで、彼の心の動きに説得力が加えられます。元々、彼は、他の4人とは住む世界が違ったということなのかもしれません。彼自身が、刑務所長によって掘られた"穴"なのかもしれません。所長との面接で彼に話された内容は本当のことなのか、彼を翻意させるための所長が仕掛けた罠だったのか...。


5人の"計画"の結末が示されるシーンは圧巻。予測できる範囲の、まぁ、無難な結末であるにも拘らず、それまでの雰囲気を一瞬で変化させるインパクトのある映像になっていって息をのみました。


時代を感じさせる部分を多く持ちながら、今観ても十分に楽しめる作品となっています。