将来は、家族が経営するパスタ工場の経営に加わるため、ローマの大学の経営学部で勉強していたはずの次男、トンマーゾが、長男アントニオの新社長就任を祝うディナーに出るため、久し振りに故郷に帰ってきます。けれど、トンマーゾには、3つの秘密がありました。経営学部でははく文学部で学んでいたこと、工場の経営者でなく小説家になりたいこと、そして、ゲイであること。トンマーゾはディナーの席でそれを告白するつもりで、予めアントニオに伝えていたのですが、アントニオが先を越して自分がゲイであることを食事中にカミンクアウトしてしまいます。それを聞いた父親は、勘当を言い渡した後、倒れてしまいます。きっかけを失ったトンマーゾは何も言えなくなり、共同経営者ブルネッティの娘のアルバとともにパスタ工場の仕事をすることになりますが...。


トンマーゾのマルコとの男同士の愛。アントニオと元従業員ミケーレの実らぬ恋。アルバの心の中にあったであろう叶わなかった恋。トンマーゾの家族と同居する叔母、ルチアーナの裏切られた愛。一家の中心的な存在であるお祖母ちゃんの破れた愛と望まぬ結婚。


ほとんどは成就しなかった様々な愛が描かれます。そして、物語の中心になるのが家族。といった辺りは、いかにもイタリアが舞台の作品と言ったところでしょうか。


お祖母ちゃん、父親のヴィンチェンツォ、母親のステファニア、アントニオ、トンマーゾ、アントニオたちの姉のエレナその夫のサルヴァトーレと娘2人、ルチアーナ、さらに使用人のジョヴァンナとテレザ。それぞれが個性が丁寧に描かれ、彼らの間で繰り広げられるドラマに奥行きが出ています。


アントニオの告白で動揺し続ける父、受け入れるまでに時間はかかったものの堂々とした母、2人がゲイだと気付いていたエレナ、どっしりと構えているお祖母ちゃん。父親の動揺振りがコミカルに描かれて笑わされました。そして、それに較べ、それぞれの温度差はあるものの余裕を持って受け止める女たち。2人の息子がゲイだと近所の噂にもなり皮肉られる母が相手を言い負かすシーンなど、まさに"母は強し"。


やがて、なかなかローマに戻ってこないトンマーゾを心配して恋人のマルコとゲイの友人たちがやってきます。そこで、ゲイであることがばれないようにドタバタする彼らの様子、トンマーゾをゲイだと知っているアルバも一緒に出かけたビーチでのゲイ仲間3人によるダンス。


コミカルなシーンが続く中で、浮かび上がってくるのは、家族の大切さ。愛する相手が異性でも同性でも、恋に破れても成就しても、望まぬ結婚から生まれた家族でも、仲違いしても、やがて、人は、家族のところに戻っていき、そこで受け止められていく。


強烈に同情したアルバ。あの破壊的な行動の背景は何だったのかとか、パスタ工場はどうなったのかとか、あの新製品はどうなったのかとか、粗さが感じられる面もありましたが、全体としては、コミカルな部分とシリアスな部分のバランスも良く、個性的な登場人物が巧く絡み合い、テンポも良く、最初から最後まで楽しめました。


DVDになったら、また観たくなるかもしれない一本です。



公式サイト

http://www.cetera.co.jp/aldente/index.html



あしたのパスタはアルデンテ@ぴあ映画生活