トラックの運転手として働きながら、妻亡きあと、男手ひとつで息子の俊也と娘の桃子の2人の子どもを育ててきた宮田淳一。父親として、男として、見栄や意地を張りまくり、やせ我慢をして頑張る淳一でしたが、2人の子どもが東京の大学に進学することが決まり...。


愚かに見えるほどの、淳一の意地っ張り。たいしてカッコよくない...というより、ほとんどカッコ悪い淳一が、そんなにカッコつけても、かえって見苦しいだけなような、そんな感じさえしてきてしまいますが、そんな淳一に、冷たく突き放すわけでもなく、変に同情をするわけでもない冷静な視線が注がれます。


前時代の遺物のような淳一のあり方。そこには、滑稽さも、愚かさもあり、一方で、本気の必死があります。必死になれば成る程、カッコ悪かったりもするわけですが、カッコ悪さなど省みず突き進めば、ある種の見事さが浮かび上がってくることもあるもの。


そして、この淳一父さん、なんだかんだ言って、良い父親なのです。彼が、いかによき父だったのか2人の子どもの成長振りで示されます。


さらに、母の不在の大きさ。日本のフツ~の家庭では、母が父と子どもの中継点になっていることはよくあること。そんな母を失った父と子どものギクシャクした感じも上手く描けていて、家族の情景が心にスッと入ってきました。


泣きたくなる場面で、同時に笑わせられる。痛くて哀しい淳一が、ダンディとまでは素直に思えなくても、可愛らしく感じられてくるそんな作品でした。


ラスト。「男は泣かない」主義だったはずの淳一に大きな変化が訪れます。それは、やはり、淳一の成長だったのでしょう。


なかなか理想のようにはいかないけれど、現実は厳しいけれど、地味でフツ~な人生でも、十分に生きるに値する、そんな風に思えてくる作品でした。


一度は観ておきたい作品だと思います。



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あぜ道のダンディ@ぴあ映画生活