あかね空 特別版 [DVD]/内野聖陽,中谷美紀,中村梅雀
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直木賞受賞作品でもある山本一力の同名小説を映画化した作品。原作は未読です。


江戸、深川蛤町の職人長屋に、京から豆腐職人の永吉がやって来ます。京生まれの京育ちで、京の豆腐屋で修行してきた永吉は、長屋で豆腐屋を始めます。固くて大きな豆腐が好まれていた江戸で、永吉の京風の豆腐は、なかなか売れません。けれど、そんな永吉を好ましく思い助けるおふみや老舗の豆腐屋の支援もあり、徐々に商売は軌道にのります。やがて、永吉とおふみは結婚、彼らを支援してくれていた老舗の豆腐屋の店を譲り受け、2男1女をもうけ、順風満帆でしたが...。


内野聖陽の2役は見事。全く印象の違う2人をしっかりと演じ分け、1人2役の不自然さは全く感じられませんでした。中谷美紀も健気な恋人役、そして、盲目的ともいえる愛情を息子に注ぐ母親の心情を巧く表現していたと思います。特に長男を偏愛する辺り...これって、特に昔の母親にはよくありましたし...。"母は強し"な男前なところもカッコよかったです。中村梅雀も善人面した悪人という役どころにしっかりと嵌っていました。


永吉とおふみの恋、相州屋と永吉、相州屋と親分の関係、永吉とおふみを中心とした家族の物語...豆腐を柱に、様々な要素が絡んで家族の絆、人と人との世代を超えた繋がりが描かれます。


相州屋と親分の関係など、実に押さえた描き方でありながら、必要な部分はしっかり伝わってくる、少々、物足りなさもありましたが、それでも、ツボを押さえた巧い描写だったと思います。


でも、全体としては、そうした様々なよさが生かされていない感じがします。語られるエピソードが多く、全体に駆け足な感じなのに、やけに、ゆったり、のんびりした感じがします。そして、ゆったりな割には、個々のエピソードの描き方が薄い印象を受けました。


個々のエピソードが、ただ並べられたような感じになって、軸となるものが見えにくかったので、全体に印象がぼやけてしまったのかもしれません。物語の中心にあるのが豆腐なので、そこへのこだわりの部分は、もう少し、掘り下げ、作品に一本の柱となるものが据えられていたら、もっと、全体がすっきりと纏まったような気がします。


一方、再現された永代橋の映像は良かったと思います。江戸情緒たっぷりで脳裏に焼きつけられました。少々、模型っぽさが残ってしまった点は残念でしたが...。そして、残念ながら、タイトルにもなっている"あかね空"が人工的な感じになりすぎてガッカリ。ここは、やはり、本物の"茜色"を感じさせて欲しかったです。


江戸の豆腐の大きさと硬さにはビックリ。時代が変われば、豆腐も変わるのですね。あの大きさなら、ある程度硬くないと、持ち上げる時に崩れてしまうでしょうけれど...。


多分、原作は面白いのだと思います。是非、読んでみたいと思います。



あかね空@ぴあ映画生活