普通の人々 [DVD]/ドナルド・サザーランド
¥2,625
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ロバート・レッドフォードが監督としてデビューした作品。


平凡な4人家族を突如襲った長男バックの事故死と次男コンラッドの自殺未遂。コンラッドは、命をとりとめ、退院して家に帰りますが、両親、特に母親との間はギクシャクしたまま。コンラッドは、退院後も神経科医のもとに週2回通い、治療を受けますが...。。


普通の人、普通の家庭。傍から見ると平々凡々な家族の中も、様々な問題を抱えていたり、諍いがあったり、感情のずれが生じていたり...、なかなか難しいもの。


家族だから理解し合えたり、思い遣れたり、守ったり、大切に思ったり...。けれど、一方で、家族だからこそ、過大に期待をしてしまったり、過剰な義務感に縛られてがんじがらめになってしまったり、深い恨みを抱いてしまったり...。


本作の家族は、そのメンバーの一人を喪っています。こうした場合、互いの喪失感を思い遣り、慰め合い、支えあえることもあるでしょう。一方で、その責任を押し付け合い、批判し合い、傷つけ合うこともあるでしょう。


本作の家族は、どうも後者の道を辿ってしまった様子。


ストーリーの進行とともに、徐々に明らかになっていく長男が亡くなった事故の真相。その中で分かってくる家族の中でのスレ違い。


コンラッド自身も、父親も、そのすれ違いに気付き、修正の方向に目を向けようとします。けれど、母親は...。自分の問題と向き合う気がないのか、向き合うだけの力を持ちえずにいただけなのか...。息子を、夫を傷つけながら、その自覚のかけらもない様子に、かえって、彼女の抱える問題の深さを見せてくれています。


やり切れなさの残るラストは、決して後味の良いものではありません。けれど、どうしようもない時は、無理に、ともに過ごそうとせず、"離れる"というのも大きな意義を持つものかもしれません。離れれば、少なくとも、それ以上は、直接傷つけ合わずに済むわけですし、新たな傷を防げれば、徐々に傷も癒え、それぞれの道を見出すきっかけになるかもしれないわけですし...。


それぞれの気持ちをぶつけ合えば、互いに嫌な思いをすることもあるでしょう。でも、そこからしか始まらないものもあるのです。神経科医も感情はマイナス面も伴うものであることを説明していますが...。その痛みや苦しみの反面に喜びがあるように、崩壊とともに、新たに生まれるものがあることにも言及して欲しかったです。その辺りがあれば、ずっとスッキリと観終えることができたのではないかとは思いましたが...。


悪意を持って悪を為す者がいないのに、不幸を生み出してしまう人間の哀しさが胸に沁みました。


地味な作品ですが、いろいろと考えさせられます。観ておいて損はない作品だと思います。



普通の人々@ぴあ映画生活