バッタ君 町に行く [DVD]/出演者不明
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アメリカのアニメーションの黄金期、「ポパイ」、「スーパーマン」といった作品を生み出し、1930年代を通じて、ディズニーの最大のライバルと言われたフライシャー兄弟が1941年に製作した長編アニメーション映画。


都会の真ん中に虫たちが暮らす草むらがありました。しかし、その囲いが壊され、人間が入り込むようになり、虫たちは危険に晒されます。そんなある日、長旅を終えて、恋人のハニーのもとに帰ってきたバッタのホピティは、彼らの惨状を知り、安全な土地への移住を提案します。虫たちは、移住を決意し、新天地に向かいます。一方、ハニーに片想いをし、ホピティを煙たく感じていたカブト虫のビートルは、彼の部下の蚊のスマックとハエのスワットを使って、ハニーとホピティの仲を引き裂こうと企み...。


歴史的な価値のある作品であることは確かでしょう。けれど、今の時代に観ると良くも悪くも"古典として価値がある作品"だとは思えますが、古びた印象は拭えませんし、今の時代になお楽しめる作品とは言い切れない感じがします。


虫たちと人間の関係が必ずしも"敵対関係"にあるものとして描かれていないところには好感が持てます。虫たちにも人間から逃げ回るだけでなく、利用できるところは利用しようという逞しさを見せています。そう、同じ地上に住む者同士、戦って傷つけあうばかりでは、埒があきません。互いに、できるだけ迷惑にならないように、それぞれの場でそれぞれの生活を営めば平和に収まるのでしょう。実際、私たちも、蜜蜂や地中の虫や微生物たちの世話になっている部分も随分あるわけですし...。


虫たちの造形も、決して、可愛いわけでもないし、キャラクター商品になって欲しいとも思えないのですが、独特のクセのあるユーモラスな雰囲気は印象的です。欲を言えば、もう少し、それぞれの虫ならではの特性を出したキャラクター作りがされていれば、虫を主人公にしたアイディアがもっと活かせたと思うのですが...。


70年も前の作品と思えば、相当に画期的な作品であったろうと想像することはできます。今観れば古さが目に付くのは致し方ないところですが、「フルアニメーション」という手法の魅力は十分に感じられますし、CGが主流となった今だからこそ、将来に残しておきたい作品だと思います。


一度は観ておきたい作品と言えるでしょう。



バッタ君 町に行く@ぴあ映画生活