愛という名の疑惑 [DVD]/リチャード・ギア
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裁判で証言することも多い精神分析医のアイザックは、患者であるダイアナの深層心理を探るため、彼女の姉のヘザーに会いますが、アイザックは、飛び切り美しいヘザーと恋に落ちてしまいます。ヘザーには夫がいるのですが、その仲は冷え切っており、離婚を考えていました。そんな時、ヘザーの夫が殺され、ヘザーが容疑者として逮捕されます。アイザックは、ヘザーに少量のアルコールでも過敏に反応し、暴力的になる"病的酩酊"という症状があることを知り...。


騙し騙され、裏切り裏切られ...。少しずつ見えてくる"真実"に惑わされながら、緊迫感ある世界を楽しめました。サスペンスとしては、左程、画期的とも意外性タップリとも思えませんでしたが、そこに、巧く男女の駆け引きと姉妹の葛藤が絡んだことで、面白い作品になっていたと思います。今はなき「火曜サスペンス」的な雰囲気も感じられますが、下手すれば陳腐になる可能性があるストーリーを演技陣が味わいのあるものに仕上げています。


冷静に考えれば、相当に悪女なヘザーですが、エリック・ロバーツが実に見事に彼女の夫が冷酷で嫌な人物であることを表現しているため、ヘザーに同情したくなります。そして、ヘザーを演じたキム・ベイシンガーも、前半は妖艶さと夫に虐げられる妻としての哀しさを表現し、アイザックにたくらみを見抜かれた後半は、一転して、鬼と化す。その変化が本作の凄みを強調しています。


もちろん、主役のリチャード・ギアも好演。ヘザーと簡単に恋に落ちてしまう辺り、精神科医としては脇が甘すぎる感じはしましたが、ヘザーの魅力が精神科医としての矜持を簡単に崩してしまったということでしょうか。それにしても、これでは、トラブル続出だったのでは...と心配になってしまいます。そして、この前半のユルさに比べ、後半の鋭い切れ味にはビックリ。美女に骨抜きにされはしたけれど、一旦目覚めれば、本領発揮ということでしょうか。


そして、ラスト。姉妹の終らない物語を感じさます。少々、しつこい感じがしなくもありませんが、後に引く不気味さを残していて印象的。


一度は観ておいて損はない作品だと思います。



愛という名の疑惑@ぴあ映画生活