あゝ! 一軒家プロレス [DVD]/ソニン,橋本真也,粟田麗
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プロレス団体"ZERO"の主宰者、獅子王は、念願のマイホームが完成し、その記念パーティを開きます。けれど、ライバルの一条が殴りこんできて、マイホームは崩壊。妻は奇病に罹ってしまいます。それを知ったTV局プロデューサーの山路は、視聴率を稼ぐため、一計を案じ、獅子王にある企画を持ちかけます。失ったマイホームを取り戻すため、そして、妻を救うため、山路の策略に嵌った獅子王は危険なデス・マッチに挑むことになり...。


あまりにグロくて、それも、無意味にグロテスクで、それだけで、ダメでした。プロレスは筋書きのあるドラマ。かなりの頻度で興行を打たなければならない世界。相当数の試合をこなさなければならないわけで、プロとして責任を持ってスケジュール通りの仕事をするためには、筋書きを大事にしなくてはいけません。


本当の真剣勝負などあるわけもない世界に命懸けの勝負を持ち込んでいるわけですが、その命の賭け方がどうも安っぽい感じがしてしまいました。結局、彼らは、山路に踊らされていたわけで、それが分かってもなお戦い続けるのは、あまりに自分たちのそして相手方の命を軽んずる行為。愛を叫んでいる場合じゃないだろうと突っ込みたくなります。


シリアス路線でいきたいのか、ぶっ飛びたいのか、どうも、中途半端。そこに必要性の感じられないグロテスクな映像が入ってくるので、目を逸らしたくなります。


ストリーも展開も滅茶苦茶。愛だの何だの言わずに、血を求めて戦うのなら、それもないわけではないと思うのですが、この展開で妻や家族への愛を持ち出されてもねぇ...。


佐野史郎が、山路の完全に"イッテしまった"雰囲気を見事に表現していて、存在感を出していました。この山路の姿が、本作の製作者の姿に重なる感じもしましたが...。山路は、本当にそれで"数字を取れる"と思っていたようですが、本作の製作者は、本作で"数字を取れる"と思っていたワケではないですよね?


出演陣では、ソニンも、初々しく必死な感じに好感が持てました。


普通の一戸建ての家でプロレスというアイディアは面白いと思います。もっとも、クライマックスのプロレスは、"一軒家"で行われたとは言い難いと思いますが...。妻の奇病はカット、純粋に、資金難のために一軒家プロレスの興行を打つ、それも、ごく普通の家で、という流れの方がすっきりとしたと思います。


元となるアイディアを十分に活かせておらず、何とも残念な作品となってしまっています。本作が遺作となってしまった橋本真也。これは、さぞかし、心残りなのではないかと思います。



あゝ!一軒家プロレス@ぴあ映画生活