元覆面プロレスラーの"大魔神"は、高齢者ばかりになった団地で一人暮らししていました。ふとしたことから、いじめられっこの少年、タクロウと出会い、打ち解けあうようになります。そんなある日、タクロウの母親が、タクロウを連れて、大魔神の元を訪れ、「預かって欲しい」とタクロウを置いていってしまいます。仲良く生活する2人でしたが...。


う~~~んっ。言いたいことは分かるような気がします。親子の和解、夫婦の和解、高齢者問題...。


でも、それぞれの描かれ方が薄っぺらく、上滑り。それぞれ、"与えられた役割にハマッている"感じで、血の通う一人の人間という感じがしないのです。


タクロウも、父親と会うことを強く拒みますが、元々、存在すらほとんど意識しないできた相手。左程、憎しみを抱くような関係もなかったのではないでしょうか。自分を大魔神に押し付けて行った母を拒否するというなら分かりますが...。それに、大魔神に温かく受け入れられていながら、「テロリストになる」という開き直りも、どこか、違和感あります。大魔神の息子になるとさえ、言っていた訳だし...。


タクロウの父親もねぇ...。あの腹話術は何?場を和ませるための手段として活用するのは良いとして、共に生活する娘たちに他所にいる自分の息子のことを告白するのに、腹話術?いい大人が、甘ったれるなと!妻は驚いていますが、まさか、妻に事前の相談ナシの告白?酷過ぎます。


タクロウと父親の仲直りも、あまりに唐突で、あっけに取られてしまいました。いくら何でも、これはないでしょう?


タクロウの母も、その恋人ほどではないようですが、それにしても、尋常ではありません。タクロウは、この2人と暮らすことになった様子ですが、果たして、どう生活が成り立っていくのか...。


大魔神の元妻もねぇ。しばらくは連絡もなかった様子なのに、突然、やってきて、初めて出会った観も知らない子どもに、散々打ち明け話をして、勝手に"許す"とか...。よく分からないオバサンです。


大魔神と元妻とタクロウの生活も、本作中でも最高レベルの幸福として描かれながら、一瞬にして、唐突に、打ち切られます。


いろいろなことが、突然、変化し、あっけに取られている間に進んでいく。テンポの悪さと切り替えの唐突さ、ここの場面のバラバラな感じ。それが、何とも心地悪く、作品の世界に入り込めませんでした。


背景に描かれる高齢者問題なども、どこか、あまりに薄っぺらく、上滑り。ありがちなことを型に当てはめて描いただけの感じで、今ひとつ、作品にかけた想いのようなものが伝わってきません。


大魔神たちが住む団地の雰囲気とか、周囲の町の感じ、夜景などは良かったと思います。アントニオ猪木も、演技力という点ではアラも目立ちますが、熱意は感じられ、3回はくど過ぎましたが、裁縫のシーンなどホロっとする感じもありました。


でも、脚本や演出の問題なのでしょう。良い素材をいくつか揃えながら、ほとんど生かせていなかった感じがします。アントニオ猪木と親子関係、夫婦関係、プロレス、これだけで、もっと面白いものが作れたはずなのに...。何とも残念な作品です。



公式サイト

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