2005年2年、自らの命を断った実在の映画プロデューサー、アンベール・バルザンをモデルにした作品。


映画プロデューサーとして精力的に活動していたグレゴワールでしたが、不況の波の中、追い詰められ、多額の借金と未完成の映画を遺して、突然、自らの命を絶ちます。悲しみに打ちひしがれる妻と三人の娘でしたが、悲しみの中、妻は、夫の会社を立て直そうと奔走し...。


悲劇を描きながら、絶望ではなく、希望が感じられます。


グレゴワールが遺したものを守ろうとし、会社を立て直そうとするシルヴィアですが、そう巧くはいきません。グレゴワールの死により、その詳細が明らかになっていく会社の経営状況や子どもたちが知らなかった"秘密"。


父親を失った家族、妻、三人の娘。それぞれの父(夫)との関係や年齢により、微妙に違うグレゴワールへの感情が繊細なタッチで描かれ、それぞれの追った傷と再生への道のりが、彼らの絆を浮かび上がらせ、家族というものの弱さと逞しさが伝わってきます。


結局、パリを後にすることになる遺族たち。けれど、その映像は、不思議と、戦いに敗れ打ちひしがれた者たちの逃走ではなく、過去を整理し、前に踏み出そうという決意に満ちた清々しさを伝えてくれています。パリの街を出る車に乗るシルヴィアの決意を覗かせ、力強さを感じさせる表情が印象的。


全体に淡々とし過ぎて、やや、単調になった感もしないではありませんが、静かで明るい光に包まれ、大切な存在を突然失い、家族が新しい生に向かっていく姿が胸に沁みてきます。静かで地味な作品ですが、観終えてから、ジワジワと沁み込んでくるような作品。観ておいて損はない作品だと思います。



公式サイト

http://www.anonatsu.jp/



あの夏の子供たち@ぴあ映画生活