アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~ [DVD]/アンヴィル
¥3,980
Amazon.co.jp


現在活躍する数々の人気バンドに大きな影響を与えながら、不遇の存在であり続けたヘヴィメタバンド、アンヴィルの活動の軌跡を追ったドキュメンタリー。夢を諦めずに30年間バンド活動を続けてきたメンバーたちと彼らの家族やファンの姿を交えて"アンヴィル"を描きます。


数々の人気バンドに大きな影響を与える特別な存在でありながら、"売れないバンド"、アンヴィル。バンドの活動では食べていけずアルバイトの日々。満足な住居も持てない生活。彼らから影響を受けた人気バンドは稼ぎまくっているというのに。


音楽だけでは生活できないという苦しい状況の中、当然のことながら、メンバー同士に貧しさゆえの諍いが起こることもあります。もちろん、脱退するメンバーも出てきて、その後の補充に悩んだり...。


それでも、30年間、存在し続けてきたアンヴィル。


夢のために生活を犠牲にする。本人たちはそれで幸せでも、巻き込まれる家族はたまったものではないでしょう。家族のために夢を犠牲にすることが幸せか。何よりも夢に賭けることが幸せか。家族のために夢を諦めることが大人としての責任ある態度なのか。夢に向かって絶えず前進し続ける姿を家族に見せることこそが大人としての矜持なのか。


正解のない選択肢。それでも、夢を持ち続け、そこに向かって走り続けた彼ら。もちろん、"直接、関係のない第三者"だから、ということはあるのでしょうが、現実の生活のために夢を諦めることの方が"大人の分別"として評価されがちな今の日本社会にどっぷりと浸かった私たちから見れば、やはり、ある種の憧れが感じられます。


そして、クライマックスの日本公演。久し振りに大観衆の熱狂の中で演奏したアンヴィルのメンバーの表情。50代のオジサンたちのパワフルなステージに歓声を上げる日本の若者たち。演奏後、客席に向かって手を合わる一人のメンバーの姿が心に沁みました。日本での仕事を終えたメンバーが渋谷、ハチ公前の交差点で見せる満足気な表情。そこに、彼らが続けてきたことの意味、30年間の努力により得られたものが表現されているようにも思えました。


ヘヴィメタについて得に知識がなくても、ヘヴィメタが好きというわけではなくても、"夢を追い続ける人々と彼らの周囲にいる人々の物語"として楽しめます。


ある種、苦労を描きながら、悲惨さよりも明るさや笑いが感じられる作品。ところどころに胸を打つ言葉が散りばめられ、さすがは"苦労人"という面も感じさせられ、味わい深い作品に仕上がっています。


ヘヴィメタの好き嫌いに関わらず、一度は観ておきたい作品だと思います。オススメ。



アンヴィル!夢を諦めきれない男たち@ぴあ映画生活