アートスクール・コンフィデンシャル [DVD]/マックス・ミンゲラ,ソフィア・マイルス,ジョン・マルコヴィッチ
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芸術家としての評価を得るために必要なのは、才能よりも、自分の作品を認めてくれる強力な味方を作る"政治力"。まぁ、現実世界の中でもそんなことを実感させられる場面は少なくありません。特に、"前衛的"な分野になれば、その他大勢の一般人にとっては「何これ?」な世界だし、正直「ゴミなのか作品なのか」分からないケースもあるわけで...。


そんな"アート"な世界を皮肉った感じが、なかなか、面白かったです。学生たちが、自分たちの作品を批評しあう場面でのもったいぶった言い回しなど、地に足着かない浮ついた感じが見事に皮肉られていたと思います。


「21世紀最大の画家」になりたいという、あまりに純粋で真っ直ぐな、そして、幼い夢を持つジェロームの夢と現実とのギャップ。多くの人は、子どもの頃の夢を少しずつ失いながら成長していくのでしょうけれど、夢から現実の世界に明確に移行するのが社会に出る時期。本作で描かれるジェロームも、そろそろその時期を迎えようとしています。特にジョナが登場してからのジェロームは、ダメダメ。彼の根拠のない自信が崩れていく様子が、痛々しく、観る者の胸に青春の甘酸っぱさが拡がっていきます。


ただ、後半部分で、サスペンスタッチになっていく辺り、前半部分との繋がりが悪く、違和感がありました。


そして、ジェロームの行く末。このまま彼が殉じたフィクションの世界に生き続けるなら、アーティストとしての高い評価を維持できるかもしれません。けれど、一生、オードリーと、直接、触れ合うことはできないでしょうし、飽きられてしまえば、単なる悪人として人生を終えることになります。彼のフィクションが明らかにされてしまえば、アーティストとして興味を持たれなくなる可能性が高いでしょう。それでも、例え一瞬でも、間違いなくオードリーの心を掴めたのだから満足...なのでしょうか。


新人アーティストが世に出るきっかけを作っているカフェのオーナーが、カネのためでも名誉のためでもなく、一人の女性の心を掴むために画家としての評価を得たいと言うジェロームに、「応援する」と答えるシーンなど、結構、良かったと思います。


"アートな世界"への皮肉で最後まで押し通していれば、もっと、まとまりのある作品になったようにも思えます。途中から、変にシリアスになり過ぎた感じがありましたが、これも、前半のコミカルな雰囲気で最後まで通した方が作品の世界に集中できたと思います。この前半から後半の転換がギクシャクしてしまったところが何とも残念。


ところどころ、面白かったり、印象的だったりしましたが、全体としてのまとまりが悪く、作品自体の味わいが薄れてしまった感じで残念。悪くはないのですが...。



アートスクール・コンフィデンシャル@ぴあ映画生活