アキレスと亀 [DVD]/ビートたけし,樋口可南子,柳 憂怜
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裕福な家に生まれた少年、真知寿(まちす)は、絵を描くのが大好き。画家になるという夢を持っていて、両親は、そんな彼を留学させることも考えていました。しかし、経営していた銀行が破綻し、追い詰められた両親は自殺。真知寿を取り巻く環境は一変します。遠い縁者の元に預けられ、自由に絵を描くこともままならなくなりますが、それでも、画家になることだけを夢見る真知寿。やがて、青年になった真知寿の元に、幸子という一人の理解者が現れます。やがて、二人は結婚。真知寿の夢は夫婦の夢となります。二人の創作活動は、警察を巻き込むほどにエスカレートしていき...。


社会的な常識も規範も法律も、人間としての倫理も超えて、絵に人生を賭けようとする真知寿の姿。正直、そこまでやるなら、子どもを持つな...とも思いましたが、ここまで一つのことに全てを投げ出す人生には、やはり、どこか、清々しさを感じますし、羨ましさも覚えるもの。


そんな真知寿に全面的な愛情を注ぐ幸子にも、一般的な常識とはかけ離れたところにはあっても、人がなかなか味わえることのないある種の幸せが感じられるもの。


ただ、青年期の真知寿と幸子を演じた柳 憂怜と麻生久美子が、中年期を演じたビートたけしと樋口可南子の間に違和感が拭えなかったこと。ここは、青年期を演じた二人で最後で押し通した方が良かったのではないかと...。


そして、何より違和感が残ったのは、真知寿は、一体、何がしたかったのかが見えてこないこと。そこのところに引っ掛かってしまいました。多分、少年時代の真知寿は、純粋に描きたいものを描きたい様に描いていたのでしょう。どことなく、ジミー大西を髣髴とさせるような画風ですが、それなりの真知寿自身の想いを感じさせる絵だったと思います。けれど、青年期以降の彼の絵からは、その輝きが見えてきません。


特に画商との出会い以降は、何だか、画商の言うなりで。芸術に身を捧げるなら、ここまで全てを賭けるなら、自分自身が本当に表現したいものを表現したい形で描くのでなければ嘘だろうと...。


もしかしたら、"ゼンエイゲ~ジュツ"を皮肉った作品...なのでしょうか?所詮は、何とか売れるものを生み出そうと画商に振り回されるだけの人生なのだと。そんなものより大切なのは、すべてを包み込んで自分を受け入れてくれる"女神"の存在なのだと。


ある意味、"男の身勝手"なんでしょうね。そんな"都合のイイ女"がいるかって...。


北野武監督作品は、あまり、観ていないのですが、何となく、観る気になれないでいたのですが、どうも、肌が合いませんでした。題材は悪くないと思いますし、そこに興味を惹かれたからこそ、本作を観たのですが...。



アキレスと亀@ぴあ映画生活