赤と黒 [DVD]/ジェラール・フィリップ
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スタンダールの実際の事件などに題材をとった同名の名作小説を映画化した作品。随分前に原作を読みました。


1820年代のフランス。貧しい家に生まれたジュリアン・ソレルは、容姿に恵まれ、知性にに優れた青年でした。町長のレナールに見込まれ、子どもたちの家庭教師として雇われます。けれど、レナール夫人と恋に落ち、その関係をレナールに疑われるようになり、逃げるように神学校に行きます。そこでも、優秀さを認められ、貴族のラ・モル侯爵の秘書となりますが、令嬢のマチルドと愛し合うようになり...。


本作の見所は、やはり、ジェラール・フィリップの美しさなのでしょう。ただ、その美しさゆえに、原作の社会批判的な味わい(努力により立身出世を図れたナポレオン時代から、出自により人生が決められる身分社会への逆行に対する批判)は薄れ、ラブ・ストーリーの色合いが濃くなっています。そして、その上品な美しさが、彼の出自をあまり感じさせていないため、彼の"野心"の部分が軽くなってしまったようにも思えます。


作品全体の雰囲気は、良くも悪くも古典的。1954年の映画ですから、当然なのですが、やはり、古さは感じます。けれど、古くはあっても、本作自体の存在感に左程の衰えは感じられません。


表現手法など古臭さも感じますが、原作の流れに沿ってしっかりと作品の世界が構築され、豪華絢爛で重厚感があります。特に女性陣の衣装や家具調度などは、柔らかな色彩が中心的に用いられ、優雅さが醸し出されています。


立身出世を第一の目標とし、自身の知性と美貌を武器にのし上がっていこうとしていたはずのジュリアンの冷徹な野心を溶かしたレナール夫人の深い愛。その愛により最高の幸福感を味わうジュリアン。下手すれば安っぽいメロドラマになる危険性のあるストーリーを双方がその人生を賭けたラブ・ストーリーとして品良く仕上げた背景にあったのは、ジェラール・フィリップとダニエル・ダリューの名演も印象的。


184分。3時間を超える長編。作品の表現など、やや、冗長に感じられてしまう部分もありますが、一度は観ておきたい作品だと思います。


古典の世界を堪能できます。



赤と黒@ぴあ映画生活