離婚し、娘のスーザンとも別々に暮らしていたハーヴェイでしたが、スーザンの結婚式のため、ニューヨークからロンドンへ行くことになります。仕事を休むのは最小限にとどめ、週明けのプレゼンに臨もうとするハーヴェイでしたが、職場からは、ゆっくり休むように強く勧められます。どうやら、職場で邪魔な存在になってしまっている様子。ロンドンに来たものの、元妻には再婚相手がいて、スーザンと継父の関係も良好。ハーヴェイは居心地が悪く、結婚式に出席した後は、披露宴には出ず、ニューヨークへ帰ることを決意します。一方、空港の統計局で働くケイトは、婚期を逃し、40代となっています。そんな二人が出会い...。


大人の純愛物語といったところでしょうか。純愛といっても、決してストイックなわけではない二人。それでも、濃厚なラブシーンは抜き。大人ならではの自由さと大人ならではの小心さが交錯し、微妙で繊細な空気感を生み出しています。ベッドシーンもなく、きちんと大人ならではの恋愛が描かれている点は見事。


年齢を重ねて、多くの経験をして、人は成長もしますが、一方で、臆病にもなるもの。ハーヴェイに惹かれながらも、過去の手痛い経験から新しい恋に踏み出せないケイトの揺れ動く心が巧みに表現され、頷かされます。


ハーヴェイは、ケイトと出会って変わります。ケイトと出会う前の結婚式前夜のパーティでのハーヴェイとケイトと出会った後の披露宴でのハーヴェイ。人の幸せを認め、心からそれを祝うには、自身の心の中にゆとりが必要。元妻や娘との関係だけでなく、仕事の方も思いがけず好転。


まぁ、この辺りの展開は安易な感じもしますが、それぞれの人生をそれなりに懸命に歩んできた大人たち。ちょっとしたご褒美の一つくらい欲しいもの。疲れた大人への一服の癒し...といったところでしょうか。


ハーヴェイとケイトの遣り取りも味があります。

「私たち、うまくいくかしら」とケイト。

ハーヴェイは、「そんなことはわからない」と答えます。そして、「でも努力はする」と。


熱い想いも何時か醒めであろうことなど十分に分かっているが大人。けれど、心情は変化しても、それだけで、二人の関係が大きく左右されるわけでもないかもしれない。そうならないために努力することができるのも大人。


ユーモラスな描写が散りばめられ、比較的コンパクトに纏められ、軽く安心して楽しめます。


ハーヴェイとケイトのラブストーリーと並行して描かれるケイトの母親のエピソードもホンワカとして良かったです。先の展開が読めるし、特別に大きな障害もなく、割とアッサリとハッピーエンドになる辺り、ハラハラ感にもドキドキ感にも欠けます。まぁ、「大人向けのラブストーリーだから、心臓に負担をかけてはいけない」ってことでもないのでしょうけれど...。


巧く纏められた感じのする爽やかなラブストーリーで、最初から最後まで安心して作品の世界に浸ることができました。DVDでも良いかなぁとも思いますが、観ておいて損はない作品だと思います。



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