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「マルコヴィッチの穴」のヒットで成功を収めた脚本家、チャーリー・カウフマンは、次回作として、スーザン・オーリヤンのベストセラー「蘭に魅せられた男」。斬新なストーリーを求められていましたが、良いアイディアが浮かばず、行き詰まります。一方、チャーリーとは正反対の性格のドナルドも、脚本家を目指していて、養成セミナーに参加し、脚本を完成させたところ、評判は上々。脚本が仕上がらないチャーリーは、さらに、煮詰まり...


苦悩する脚本家。悩んでも苦しんでも筆は進まず、催促されても応えられず...。淡々とした描き方をしたいと思いながらも、劇的な展開を求められ、その圧力を跳ね返すこともできず...。理想と現実、脚本家としてのプライドと周囲の思惑との力関係の中で、原作はズタズタにされていきます。


原作を映画作品に適応させるのか、妥協させるのか、飲み込ませるのか。追い詰められていく中で、現実と幻想の堺が曖昧になり、過去と現在が前後し、分裂し統合され...。原作がズタズタにされる過程と、脚本家の現実が安定を失っていく過程が重なります。


時間の流れがゴチャゴチャし、現実と非現実の線引きが不明確になっていくのですが、不思議と分かりにくさはありません。そして、ところどころに陳腐な感じもしますが印象的な言葉が散りばめられ、印象に残る映像が組み込まれ、全体として楽しめる作品に仕上がっています。これも、"脚本力"のなせる技なのでしょうか。


そう。やはり、脚本家の力は大きいのでしょう。最後の最後(エンドロールの終わり)まで、細かい部分まで気配りがされ、様々な要素が交じり合い、異なる時間が流れます。それにも拘らず、ストーリーに分かりにくさは感じませんでした。もちろん、演技陣も良かったのでしょう。ニコラス・ケイジは、情けなさ全開のチャーリーとその双子の弟ドナルド、という二役を巧く演じ分けていたと思います。


こういった"裏話"的だったり、"楽屋ネタ"的な作品というのは、どちらかというと苦手なのですが、本作は楽しめました。


一度は観ておきたい作品だと思います。



アダプテーション@映画生活