秋深き [DVD]
¥3,192
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教師をしている寺田は、ある日、先輩教師に連れられ、大阪、北新地のクラブに連れて行かれ、そこのホステスの一代にほれ込みます。酒も飲めないのに、毎日、店に通うようになります。親が持ってくる見合い話にうんざりした寺田が、一代にプロポーズすると、一代は寺田の愛を受け入れ、2人の生活を始めます。けれど、暮らし始めるとすぐ、寺田は、一代の過去の男性遍歴が気になるようになり、嫉妬に苦しむようになります。そんな時、一代の乳癌が発覚し...。


愛すればこそ、人は愚かにもなり、疑り深くもなり、苦しみもし...。けれど、愛すればこそ、優しくもなれ、幸せも感じられる。時には、人を殺すほどの力を持つからこそ、愛は、人の魂を救うことができるのでしょう。


一代も寺田も、それまでの人生を大きく変えます。2人にとって、この出会いは、それだけの大きな出来事だったのでしょう。


寺田の一代への愛、そして、嫉妬から暴走する寺田の愚かさ、特に、一代が乳癌だとわかった後の暴走振りには圧倒されます。そこまで、愚かになれるほどに、すべてを捨てられるほどに、愛をぶつけられる相手にめぐり合えたことは、大きな幸せだと言うべきなのでしょう。


そして、一代の寺田への愛の見事さ。彼女との関係が、寺田を破滅の一歩手前まで追い込みもしますが、けれど、一代の愛が寺田を救ったことも確か。特に、最後のエピソードは胸に沁みます。こんな風に大きく深い愛情に包み込まれた男性は幸せなのでしょう。本作において、一代は、寺田が嫉妬に身を滅ぼされる直前で病が発覚し、その人生を終えてからも寺田を救います。寺田にとっては、まさに、女神。


寺田さん、何だかんだ言って、一代に守られ、神にも見捨てられず...。妄想に苛まれ、すべてを失いそうになる寺田が、土壇場で救われるのは、神が、愛に免じて彼を許したということなのかもしれません。そう、ギリギリのところで、一代と心を通わせることもできたわけですし、それは、神からの許し...という以上にご褒美だったのかもしれません。


寺田を演じた八嶋智人、一代役の佐藤江梨子。そして、後半に登場する佐藤浩市。それぞれに、役柄の人物像を巧みに表現していて、それぞれの存在感を出して見応えありました。


大阪を舞台にした大阪弁のドラマだからこそのコミカルな雰囲気もあったのだと思いますが、重くなり過ぎず、悲しくなり過ぎず、ほんのりとした温かさが残る作品になっています。


一見の価値あり。



秋深き@映画生活