木下半太の小説「悪夢シリーズ」3部作の第1弾「悪夢のエレベーター」を映画化した作品。原作は未読です。


小川順は、頭に鋭い痛みを感じて目を覚ますと、急停止したエレベーターの中でした。一緒に乗り合わせたのは、刑務所帰りの空き巣常習犯、人に触れることでその人の過去を見てしまう超能力者、自殺願望のゴスロリ少女の3人。非情ボタンは故障、携帯電話はバッテリー切れ、助けを呼ぶ手段もないまま、何故か、互いの秘密を暴露しあうようになり、思いもよらないことが起きてしまって...。


なかなか面白かったです。血飛沫は飛ぶし、人は死ぬし...。というわりには、重さも暗さも酷さもあまり全面に出ず、面白く観ることができました。


エレベーターに、偶然、集まったかに見えた4人。でも、互いの遣り取りが繰り返される中、少しずつ、綻びが出てきて、裏にあるものが垣間見えてきて...。そして、どんでん返し。それで、終わり...とはならず、さらに...。


ただ、一方で、突っ込みどころも...。


エレベーターの仕組みについて、詳しくないので、よくは分からないのですが、あの状況で、本当に、外部との通信断ち切られるのでしょうか?そんなことで、本当の非常時は大丈夫なのか心配になります。


そして、内野聖陽演じる人物。これが、一体、何者って感じなんです。身重でありながら、夫の浮気に悩まされる妻に同情し、一芝居打つ。恋人に捨てられ自殺しようとする女性を助ける。でも、イザとなると、罪を逃れるために必至になって隠蔽工作。その過程では、平然と非情なな嘘もつく。ちょっと、人のよさそうな彼のこと、もうちょっと相手への同情とか、自分の過失への後悔とか、そういったものがあまり感じられないことには違和感があります。そしえ、素の彼と彼が演じた人物のキャラクターの切り替えが今ひとつしっかりとできていないような...。


そして、一旦、終わったかに見えて、その後...。その「その後」の部分が、やや、間延びしてしまっていて、長さを感じてしまいました。


展開も、都合のよさが目に付きます。携帯のバッテリー切れ?あの時、何故、もっと、きちんと確認しなかったのか?普通、疑問に思うでしょうに...。


それに、前半部分のラスト。何故、あの事態が起こったか、その原因について誰も追求しようとしないことも気になって仕方ありませんでした。普通、どうして、そんなことになってしまったのか、先ずは、そこに意識を向けるのではないかと思いますが...。内野聖陽が演じた男性も、推理小説を相当読み込んでいる推理好きなようなのに...。


で、ラストの後が気になります。あの時、終わらずにここまで引っ張って、何故、ここで終わるのか...。どうも、中途半端な感じがしてなりません。


"管理人さん"もほどよく不気味で面白い存在感を出していたのですが、どうも、遣われ方が中途半端。惜しい気がします。


ゴスロリ少女の佐津川愛美が見事にその存在を印象付けています。様々な表情を見せていますが、どれも、巧く役柄を表現していたと思います。


決して、つまらない作品ではなかったです。というより、面白かったとさえ言えます。役者陣もそれぞれ見応えありましたし、面白くなるハズの要素はいろいろあったのですが、残念です。


もっと、思いっきりコミカルで笑える感じになっていると、相当、面白くなったと思うのですが...。



公式HP

http://www.akumu11.jp/



悪夢のエレベーター@映画生活