第18回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)を手にした内藤隆嗣監督のデビュー作品。


寂れた港町で漁師をする万造。一戸建ての家に一人暮らしをする独身男性で、一人で料理し、一人で食べる毎日。たまにスナックで酒を飲むことぐらいしか楽しみもありません。ある時、町役場がお見合いパーティを開き、万造も参加しますが、寡黙な性格もあって惨敗。そんなある日、万造の家に美津子と名乗る女と男の子が上がりこんでいるのを見つけます。彼女たちと一緒に生活することになり、万造は幸せを感じるようになりますが...。


なかなか、面白かったです。




[ネタバレあり]






"嫁不足"に悩む漁業の町。寡黙で地味で、町の企画で開かれたお見合いパーティーでも、なかなか、女性と話もできない万造。彼の何ともいえない絶妙なハズレ具合がトボケていて笑えました。一見、服装などにも構わないような地味な様子なのですが、実は、彼なりのこだわりがあり、カッコ良く生きようと頑張っている姿。


お見合いへの独特な気合の入れ方、そして、そのための準備も微妙にピントを外していてます。臭いセリフも、独特の"間"も、いかにも、万造らしいもので、作品全体の味わいを深めています。


そして、オクテだった万造の元に、突然、転がり込んできた美津子との生活。暮らし振りの変化とともに、万造の様子にも変化が現れてきます。1人だった食卓が3人となり、そこには、温かさの感じられる団欒が生まれます。本来であれば、万造は、美津子を警察に突き出すこともできたのに、彼らを住まわせようとしたそのワケが、切実に感じ取れます。


無骨な雰囲気を持った万造が、夜中にミシンを踏み、可愛いひまわりの花のアップリケを縫い付けるシーンは、ユーモラスでありながら、万造の気持ちの真っ直ぐさと誠実さ、温かさが切なく感じられる印象深い場面となっています。


最初は、万造の気持ちに応えようとしているかに見えた美津子ですが、途中から、段々、様子がおかしくなってきます。結局は、予想通り、万造は、美津子に捨てられます。


ところどころ、笑いどころが散りばめられ、特に前半は、笑いながら観ることができますが、徐々に、その裏にある切なさが胸に沁みてきます。そして、美津子に現れる変化とともに、ラストの展開が予測できるようになりますが、その変化に気付きながらも、美津子の気持ちに必至に訴えかけようとする万造の姿に哀しさが漂います。


それにしても、少年よ、もう少し前に何とかしろよ!...とも思いましたし、いくら何でも簡単に船を手放しすぎな万造でした(船をカタに借金というワケにはいかなかったのか...)し、まず、町の医者(いない?)に見せろよ!とも思いましたし、結構、突っ込みどころもありました。場面の切り替えが、暗転のタイミングや長さのリズムが今ひとつで、集中力が途切れてしまうところもあったのも残念。


また、本作の魅力の笑える小ネタについても、本筋と離れ過ぎたというか、全く関係ないような宙ぶらりんなものもあり、意味不明な感じがする部分があって、そこのところも引っかかってしまいました。


それでも、ショックから立ち直り、生活を取り戻した万造と男の子の逞しさは清々しく、彼らのこれからを素直に応援したい気持ちになれました。ブラックな部分を抱えながら、ユーモアと温かさを感じさせてくれます。見ておいて損はない作品だと思います。






公式HP

http://manzo-movie.jp/



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