『ザ・リング2』を監督するため、ハリウッドでの映画製作に取り組んだ中田秀夫監督は、その後もハリウッドに滞在、次回作とすべく、『THE EYE』のシナリオに取り掛かっていました。ところが、何度も推敲してシナリオを提出するものの、一向に撮影開始の許可が出ません。日本とは全く違う映画製作の過程にいらだたしさを感じた中田監督は、周囲への取材を始め、ハリウッドにおける映画製作の現状を探ります。


映画の都ハリウッド。そこでは、巨額の費用が掛けられた超大作が次々と生み出されていきます。その天文学的な費用を集めるためには出資者を募る必要があり、ヒットする"商品"に仕上げていかなければならないことになります。それも、映画館でのロードショーの成功だけでなく、DVD商品としても成功しなければならないのです。


そうした背景が、ハリウッドの映画の質を変えていきます。企画に時間をかけ、しっかりとマーケティングし、"多くの観客に受け入れられる"ことを第一の基準に作品を仕上げていく。


誰にでも受け入れられる平均値をクリアした作品は、それなりに多くの人にとって面白い作品にはなり得るものの、"名作"、"傑作"として長く印象に残る作品にはなりにくいもの。何故、最近のハリウッド映画が、大掛かりで豪華で、そこそこ楽しめる作品なのに印象に残らないものが多いのか、その原因が抉り出されていきます。


まぁ、ここまで徹底した商業主義というのも、ある意味では、スッキリと判りやすい感じもします。ただ、その一方で、何が売れるか、何が売れないかというのは、意外に曖昧だったりしますし、予測を裏切られることも多いもの。これまでにも、思わないところからヒット商品が生まれたり...ということも珍しくありません。


かつて、大ヒットしたものの中にも、周囲からほとんど認められないまま、製作側の情熱により何とか世に出され、そこから大きく化けていったものも少なくありません。(周囲の反対を受けながらも、やっとアルバムのB面に録音され、その後、ロングセラーとなる"かぐや姫"の「神田川」も、その手のヒット作としては有名。)


まぁ、映画として面白かったかというと、TVでも十分だったとは思いますし、作品の構成も今ひとつ面白味にかける感じはしましたし、退屈に感じてしまった部分も少なくありませんでした。それでも、カルチャー・ショックを受けながら、様々なギャップに戸惑いながら、価値観や感覚の違う人々の中で、何とか自分の作品を生み出していこうとする中田監督の姿は微笑ましくも頼もしさがありました。


わざわざ映画館に観に行くべき作品とも思えませんでしたが、DVDが出れば、レンタル料金が安くなってからでも、何かの折にちょっと見てみてもいいかもしれません。まぁ、見逃してしまっても後悔する必要もないとは思いますが...。



公式HP

http://www.bitters.co.jp/hollywood/



ハリウッド監督学入門@映画生活