あの子を探して [DVD]
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中国の小さな村の小学校。28人の子どもとたった1人の教師、カオ先生がいます。けれど、そのカオ先生がしばらく休暇を取らなければならなくなり、13歳の少女、ウェイが代用教員に指名されます。けれど、ウェイもまだ子ども。やんちゃな子どもたちに一生懸命、勉強を教えようとしますが、生徒たちはいうことを聞いてくれません。ある日、生徒の1人、ホエクーが出稼ぎのため街へ行ってしまいます。カオ先生からは、「生徒を1人も減らしてはいけない」との厳命を受けているウェイは、ホエクーを探しに街へ行き...。


貧しい農村のこと、子どもといえでも、1人の稼ぎ手。のんびり学校に通っているゆとりなどありません。けれど、生徒が減っていけば、教師の職は脅かされるわけで、教師も必死です。生徒を減らしたくないカオ先生の必死さ。やはり、お金のために一生懸命、生徒をつなぎとめようとするウェイ。


小さな小学校の生徒を巡る大人たちの思惑。自身も思惑を抱えながら、大人たちの都合に振り回されるウェイ。


かなりの年齢までのんびりとモラトリアムできる日本の感覚から見れば、ゆったりと子どもらしい時期を過ごすことができない生徒たちの姿に現実の厳しさや哀しさも感じてしまいます。


けれど、本作に登場する子どもたちの懸命な姿に、また、別の種類の子どもらしさが感じられることも確か。自分たちの力に余る問題に直面しつつも、自分たちなりに必死にそれを乗り越えようとする真っ直ぐな力。大人にはなかなか持ち得ないひたむきさ。


そして、生徒たちは、現実の問題に直面して、生きた勉強をすることになります。街まで行く交通費をどう工面するか?それを稼ぎ出す方法はないか?レンガ運びの収入でバス代を賄うには、何個のレンガを運ばなければならないか?


ウェイにしても、ホエクー探しの元々の動機は、生徒を減らさなければボーナスがもらえるという話があったから。代用教員になったのも、ホエクー探しに出かけたのもお金のため。けれど、お金のための必死さが、やがて、ウェイの中に、教師としての自覚を芽生えさせます。


ホエクー探しの経験を通して、成長していくウェイの姿には清々しさがありました。


子どもが苦労させられる社会には、子どもが安穏と過ごせる社会で生まれ育った子どもにはできない成長をしているのでしょう。そして、それは、子どもにとって、悪いことばかりではないのでしょう。もっとも、それでも、まだ幼い子どもたち。やはり、生活費を稼ぐことなど求められず、しっかりと教育を受けられるようにすべきでしょう。中国のような大きな国、それも、まだまだ国全体が豊かさを享受できていない国で、津々浦々まで、教育の機会を保障するというのは、相当に難しいことなのだろうとは思いますが...。


本作は、ハッピーエンドですが、中国のすべての子どもが安心して基本的な教育を受けられるようになるまでの道のりは、まだまだ、長いのでしょう。ラストのテロップで、その辺りの状況について触れられていますが...。


ラストはでき過ぎ感もありますが、頑張ったウェイへのご褒美としてこれくらいのことがなければ、少なくとも、子どもは学校へ行くのが当たり前、子どもを働かせるなんてどんでもないという先進国の観客には納得できない作品になってしまう...という事情もあったりするのでしょうか...。


一度は観ておくべき作品の一つだと思います。



あの子を探して@映画生活