愛のむきだし

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愛のむきだし [DVD]
¥4,040
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幼い頃、母が病気で他界。その後、神父になった父、テツと2人で暮らすユウ。理想の女性、"マリア"にめぐり合うことを夢見ながら、父との平穏な日々を過ごしていましたが、ある日、テツは、教会に転がり込んできた妖艶な女、サオリに溺れるようになり、生活は一変してしまいます。やがて、サオリがテツのもとを去ると、テツは、ユウに、毎日、「懺悔」を強要するようになります。ユウは、その「懺悔」で父を満足させられるよう、告白するための罪をわざわざ犯すようになります。やがて、「盗撮」という罪作りに没頭するようになり...。


公開時、観に行きたいと思いながら、ほぼ4時間というあまりの上映時間の長さに躊躇していましたが、やはり、一度は観ておきたくて、DVDで観ました。上下二巻。


全編に溢れるスピード感とパワーに圧倒されました。このペースで4時間というのは、凄いとしか言いようがありません。これだけの時間、飽きずに観ていらる作品に仕上がっている。その点だけでも、高く評価できると思います。


父親としても神父としても本来、期待されている役割を逸脱していくテツに対し、息子であり信者であるユウの何と従順であることか。テツが自分にかける期待を慮り、それに応えようと必至になるその一途さが胸を打ちます。ヨーコにしても、相当に自分勝手で滅茶苦茶な母、サオリの良き理解者となっていきます。


そして、父との関係に縛られながら育ったユウは、ヨーコに対し、一途な愛情を捧げます。そして、母に翻弄されながら生きてきたヨーコもユウに真っ直ぐに惹かれていきます。そこにあるのは、まさに大人になる前の思春期の若者たちの純愛。そして、その純愛は、あまりに純粋で剥き出しなゆえに狂気となり、多くのものを破壊していく...。そのために、生き、死に、狂えるからこそ、本物の"愛"なのかもしれません。


盗撮、新興宗教、非行、変態...。パッと目を引くような要素に彩られてはいますが、中身は青臭さが感じられるような初々しい恋愛。変態を表面に出しながらも、そこに描かれているものは「純愛」。闇を描くことにより光の存在をより明らかなものにするようなことなのかもしれません。グロテスクな場面もありますが、作品全体は不思議な透明感に包まれています。それは、本作が、リアルな日常というよりは、一見、ありえないような世界を描いているからかもしれません。作り物だからこそ炙り出せる真実。そんなものを感じさせてくれる作品です。


それにしても、何故、この子たちは、こんなに素直に親の思いに沿った育ち方をしたのでしょうか。罪を犯すために、非行を繰り返すユウ。けれど、一方で、学校へもきちんと通っている様子だし、両親がいない家でも、きちんと生活ができている様子。罪を犯そうという"意欲"は強くても、結局、とても、一途で真っ当で...。ユウが仲間に入る"不良"たちも、どこか、真っ直ぐさが感じられるヨイコばかり。この点においては、彼らのイマドキ珍しい気がするほどの素直さがどのように形作られてきたのか...その背景について、もう少し、言及して欲しかった気もしますが...。


そして、過剰なまでのサオリの"愛"。それは、"愛"と呼ぶことが憚られるほどの過ぎたるもの。自分勝手で、相手の都合も気持ちも構わず、自分の身の安全さえも投げ出すような激しさ。常に、その時の感情に忠実で、周囲を巻き込み翻弄し、臆すところなく我が道を突き進む。こんなオンナに関わられたら身の破滅...なわけですが、過剰さもここまで突き抜けると爽快な感じすらしてきます。


ここまで、過剰な描写をすることで、"剥き出し"な感じを出そうとしたのか。それとも、リアリティを持たせると陰惨になり過ぎるので、それを避けるために戯画的な描き方をしたのか...。その辺り、どちらつかずで中途半端な印象も残りました。


ユウを演じた西島隆弘、ヨーコを演じた満島ひかり、初め、若手が見事な演技を見せています。


最後まで飽きずに観ることができました。ただ、パワーと過剰さに圧倒されて、何だか分からないうちに終わってしまった...ただ、それだけ...という、勿体ない、ある意味贅沢な作品だったと思います。


それにしても、本作が、「実話を元にしている」というのが凄いですが...。

一度は観ておきたい作品だと思います。



公式HP

http://www.ai-muki.com/



愛のむきだし@映画生活

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