JUNO/ジュノ <特別編> [DVD]
¥3,162
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16歳のジュノは、バンド仲間のポーリーと興味本位でたった1回だけしたセックスで妊娠してしまいます。高校生に子育てなどできないと中絶するつもりだ親友のリアに話したところ、中絶反対運動に夢中の同級生に「赤ちゃんにはもう爪も生えている」と言われ、産む決意をします。それでも、育てるつもりはなく、フリーペーパーで子どもを欲しがっている理想的な若夫婦を見つけ、里子に出す契約をします。次第に、お腹も膨らんできて...。


10代の妊娠。けれど、罪悪感のようなものはあまり感じられず、あっけらかんとドライに描かれます。


けれど、アメリカも、保守的な宗教観や道徳観が、確実に社会の一部を支配する国。恐らく、ジュノやその周辺の10代の少女の妊娠という出来事の受け止め方は、アメリカ社会一般のものとは言えないでしょう。まぁ、中絶をしないという選択は、キリスト教原理主義的な考え方には合致するものなのでしょうけれど。


ジュノの家庭は、決して、裕福ではない様子。ジュノが妊娠の告白をしようとする場面で、「退学処分か?」と聞く親も親...。普通、いきなり「退学か」という心配の仕方をするもの?そして、10代の妊娠は、母親の高等教育を受ける機会を潰すことなりがちで、貧困の再生産に繋がりやすいわけで...。もちろん、若くして中絶することのリスクを考えれば、産むという選択自体は正解なのでしょう。


一方、ジュノの子どもを引き取ろうとする若夫婦はジュノに比べ、上流に属する人々の様子。ジュノの友人の喋る言葉が理解できなかったりする場面があります。この辺り、アメリカの格差...というより、階級社会の現状を突いている部分でもあります。


また、印象に起こったのは、女たちの逞しさに比べ、頼りない男たち。産む性と産まない性の差...ということなのかもしれません。思わない妊娠により、違う世界の人々が出会い、そこに、女たちの生まれ育ちを超えた連帯が生まれる。その女たちの逞しさが、男たちをも変えていく。そこに本作の魅力があるのだと思います。


そして、「妊婦ユキ」って何者?こんな形で日本が登場するのも面白かったです。


テンポも良く、ユーモアもあり、何といっても、ジュノを演じるエレン・ペイジの名演が印象的。ちょっと、ぶっ飛んだところもあるけれど、至って真っ直ぐで真摯なジュノの可愛らしさを見事に表現しています。


教訓「妊娠を望まないのであれば、避妊を!」。観ておいて損はない作品です。



JUNO/ジュノ@映画生活