トニー賞9部門制覇、6137回という当時としての記録を作ったロングラン公演。観客動員は664万人。まらに伝説と言うべきミュージカル「コーラスライン」が16年ぶりに再演されることになります。その舞台に上がるダンサーを選ぶためにオーディションが行われます。8カ月にも及ぶオーディションに挑むダンサーたちと数多くの挑戦者の中から役に相応しい人材を選んでいく製作者側の姿を追います。


ドキュメンタリー作品として、素材の選び方が見事。ミュージカルのストーリーとオーディションに挑むダンサーたちの物語が重なり、大きな壁に挑むその姿が、そのまま、舞台の上の物語を表現するものとなります。オーディションの過程は、彼らが舞台の上に描こうとしている物語そのもの。


ミュージカルは、このオーディションの16年前に作られたもの。けれど、本作に登場するダンサーたちにとって、登場人物たちの物語は、「自分の物語」として感じられるもの。時を経ても変わらないダンサーの悩みや苦しみ、喜びや恍惚がそこにありのです。オーディションに挑むダンサーたち。その個々の物語こそが、生きた「コーラスライン」なのです。


会場に入りきれないほどの大勢の挑戦者たち。その中から最終的に選ばれるのは、ほんの一握り。そして、最終的な結果が明らかになるまでの8カ月という長い日々!単なるテクニックの問題だけでなく、容姿の問題だけでなく、選ぶ側の持つ"イメージ"という見えない敵との戦い。


緊張、不安、時間との戦い...。本当にタフなものでなければ勝ち抜けない厳しい世界。そして、厳しさは選ばれる側だけにあるのではなく、選ぶ側もが負わなければならないもの。選ばれる側には、選ばれて舞台にたつことにより、ダンサーとしての将来を切り開いて行きたいという想いがあり、選ぶ側には、以前の舞台を上回るものを作り上げたい、そして、それを可能にする人材を発掘しなければならないという切迫感があり...。どちらも、真剣そのもの。まさに、人生をかける姿がそこにあります。


自分の夢に向って、真っ直ぐに生きる。「人生の全てをかけてきた」そう堂々と言い切れるだけ、彼らは、一つの道にかけてきたのです。何かにとことん努力するという経験をしてこなかった我が身を振り返えらば、彼らのあまりに一途な生き方に、恥ずかしさを感じてしまったりもしますが...。


それでも、ダンサーたちの物語に素直に感動することができましたし、泣けました。


本作で取上げられているのは、出演者の一部。もっと多くの出演者の物語を見たかったとも思いますし、本作で描かれた出演者たちについても、もっと一人一人についてじっくりと描いて欲しかったという気がしないでもありません。けれど、上映時間を考えると、ちょうど良い感じに取捨選択されたのだと思えますし、個々の対象との距離感も程よく、全体のバランスも良かったと思います。


お勧めです。




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