1991年のアメリカ。長年連れ添った夫を亡くしたばかりのエセル・アンのもとに、突然、アイルランドの青年、ジミーからの電話が入ります。「エセルとテディ」と刻まれた指輪をベルファストの丘で見つけたとのこと。それは、50年前、永遠の愛を誓ったものの、戦死してしまったかつての恋人との思い出の品でした。それから、50年、心を閉ざして生きてきたエセル・アンに封印した過去と向き合う時がやってきます...。


これから戦争に狩り出されていく若者たち。生きて戻ることができないかもしれない旅立ちを前に前にした彼らが交わす「約束」。それは、平常時のもの以上に重いものだったことでしょう。50年間物長きに亘り、彼らは、「約束」を貫こうとします。それ自体は、美しいことなのでしょうが、彼らの「約束」に縛られた50年間は、実に重いものでした。まぁ、この辺り、あまりに純情すぎる感じもしましたが、時代設定を考えれば、無理のないことかもしれません。


そして、閉ざされてしまったエセル・アンの心と、そのことにより、傷つけられた人々。エセル・アンの夫となったチャックも、その二人を見守る立場となったジャックも、そして、エセル・アンとチャックの間の娘マリーも...。もっとも、この状況を生み出したのは、エセル・アン...というよりも、テディがジャックとチャックに求めた約束だったと考えるべきなのかもしれません。そして、テディの死の間際の言葉は、その場面に立ち会ってしまったクィンランの運命をも縛ってしまいます。こうして考えると、テディは、なかなか罪なことをしているわけで...。特に、チャックのエセル・アンへの気持ちを知っていたのに、そんな約束をさせてしまうとは...。この部分は、少々、納得いかなかったところ。


その彼らの不幸を救ったのは、お節介でおタクっぽいアイルランドの青年。このジミーのキャラクターが、なかなか生きています。長い間、クィンランが探していて見つけられなかったものを短い期間で見つけてしまう辺り、都合の良すぎる面もありましたが、天然でトボケタ感じでありながら、誠実さ、一生懸命さが感じられれ、何とも、微笑ましく、本作に、魅力的な味わいを加えていたと思います。


そして、1991年のエセル・アンとジャック。50年という年月の長さを湛え、抱えていたもの重さが感じられる表情が見事。そして、彼らが長年背負ってきたものから解放されるラストの若々しさ!


少々、物語が拡散しすぎた感じもします。ベルファストでのテロリストに纏わる展開など、蛇足のようにも思えました。けれど「約束」の呪縛から開放された人々の表情は清々しく、気持ちよく観終えることができました。どんなに長い年月がかかってしまったとしても、人は生きている限り前進できるものなのかもしれない...そう思わせてくれるラストです。


特にお勧めというほどではありませんが、そこそこ他の楽しめる作品にはなっていると思います。



公式HP

http://www.yubiwa-movie.jp/



あの日の指輪を待つきみへ@映画生活



http://www.eigaseikatu.com/tb/tb?movie_id=20966