1959年、ギターを抱え、ウディと名乗る黒人の少年が貨物列車に飛び乗り、入院している本物のウディに会いに行きます。社会派フォーク歌手として人気が出たジャックは、表舞台から姿を消した20年後、牧師としてキリスト教の布教に熱心に取り組んでいました。そのジャックの伝記映画に主演し成功したロビーは、9年に及ぶ結婚生活に終止符を打とうとしています。フォークからロックに転向したジュードはスタートして活躍していましたが、ドラッグに蝕まれており...。


一人の人物を複数の俳優が演じていきます。そして、時間が前後するので、観ていて「分かり難い作品」という感じが強いのですが、それでいながら、観終えてから作中の様々な場面が頭の中で反芻される作品でもあります。


作中にボブ・ディランの曲が散りばめられ、ボブ・ディランを彷彿とされるエピソードがところどころに登場するのですが、主人公はボブ・ディランと名乗らないし、きちんとした事実のみが描かれているわけでもありません。


真実を描き出すための最善の手法が事実の積み重ねにあるわけではなく、フィクションやイメージの累積が却って本当のことを表現することはあるわけですが、本作はそれを試みているのでしょう。さて、その試みが成功しているかと言うと...。何がどうなっているのかを考えながら事実関係を追うことに精一杯で、それ以上、深く作品の世界に入り込むことがしにくかったですし...。


ボブ・ディランのことについては、詳しくないので、本作がどの程度、ボブ・ディランの真実に迫っているのかはわかりません。けれど、一人の多彩な人物を描く手法としては面白かったし、自分の音楽、表現したいものといったものに悩みながら、試行錯誤を繰り返し、その時その時の真実を表現しようとしてきた一人のアーティストの人生が多少は見えてきたような気もしますが...。


いろいろな人にお勧めしたい作品かというと???ですが、印象的な作品であることは確かです。



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アイム・ノット・ゼア@映画生活