「この俳優が出ているというだけでその映画を観たくなる。」私にとって、そんな俳優の一人が、モーガン・フリーマンです。本作も、モーガン・フリーマンが出演しているということだけで、観ようと決めました。


自動車整備工のカーターと一代で莫大な富を築いた実業家のエドワードは、入院先の病院で相部屋となります。見舞いに来る家族に囲まれているカーターと訪れるのは秘書だけのエドワード。2人には何の共通点もありませんでした。ところが、共に、余命半年の末期ガンであることが判明。カーターが、死ぬ前にやっておきたいこととしてメモした"棺おけリスト"を見つけたエドワードは、カーターにリストの項目を実行することを持ちかけます。2人は、周囲の反対を押し切り、冒険の旅に出て...。


スカイダイビングやレーシングカーでの対決。そして、エドワードの所有する自家用機での世界を巡る旅。最初は、エドワードの想像を絶するような財力に当惑するカーターでしたが、夢見ていた車のハンドルを取ると、一気に子どものように弾けます。


そして、そうした体験を通して心を通わせていく2人。それぞれの人生の中で味わったことのない体験。その中で、2人は、それぞれの人生の中に置き忘れてきた心残りを溶かしていきます。そこに現れてきたものは、それぞれが得てきた一番大切なもの。それは、一見、過去の夢のようであり、すでに失ってしまったものに思えたものでした。けれど、彼らは、確かに、それを持っていた。彼らは、別世界への旅の過程で、彼らが過去に得た本当に大切なものに気付きます。


人は誰でも、何かを手に入れるために、何かを捨てることになります。カーターは家族を養うために勉学を断念し、エドワードは仕事のために家族との幸せを手放します。それは、それぞれにとって、後悔の種であり、不幸の元となります。けれど、捨てたものの代わりに手に入れたものがそれぞれにとって意味のあるものであったことも確か。カーターが手に入れた家族と過ごす幸せは、彼の最期を支えます。エドワードが手に入れた財産は、彼らの冒険のためにはなくてはならないもの。


生活を支えるために自分を消耗させ、失っていたかに思えた妻との絆は、今もカーターの手元にありました。既に失ってしまったと思っていた大切な人は、エドワードの人生から消えてはいませんでした。


死ぬまでにしようとリストアップした"棺おけリスト"(これが原題)の項目。その実現には、ただエドワードの財力により達成されたものも少なくないのですが、お金とは関係ないところでかなえることができたものもあり、その辺りのバランスも良かったと思います。特に、その中の「世界一の美女とキスをする」という項目の達成の仕方は粋で良かったです。


別にイケメンというわけでもない高齢の男性2人を主人公に据えるという、絵にならないはずの地味な作品ですが、なかなかどうして、魅せてくれます。不治の病と死という暗くて重いはずのテーマを扱っていますが、コミカルで軽妙な作り方がされていて、幸せな気持ちを味わわせてくれます。


もちろん、主役2人は期待通りの見事な演技。我が儘で人を人とも思わないようなエドワードに負けず自分の仕事を誠実にこなす秘書を演じるショーン・ヘイズも名優2人に挟まれながらきっちり存在感を出していました。


事前に伏線として張られているエドワードのセリフが、本来ならあり得ない全く境遇の違うカーターとエドワードの出会いを作る要因となっている辺り、上手く作ってあると思いますが、それにしても、この出会い、少々、無理矢理感は否めません。その部分、少々、ご都合主義な印象も受けるのですが、それでもなお、すべての人間にいつかは訪れる死を目前にした2人の言動がそれぞれの人生を浮かび上がらせ、それぞれが掴んだ幸福のあり方が観る者の心に沁みます。


かなり、お勧め。是非、観ておきたい一本だと思います。


それにしても、死を目前にした時、好きなことをするためのある程度の資金は用意しておく必要があるのかもしれませんね。もちろん、エドワードのようにはいきませんが...。



公式HP

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