- 有限会社フォワード
- アンダルシアの犬
ストーリーはありません。多分...。意味は、あるようでないような...ないかもしれません。というより、ストーリーとか意味とか、そういったものを排除したところに成り立っている純粋に感覚的な世界なのでしょう。そして、このグロテスクな雰囲気こそが、最も、純化された感情であり、"ゲージュツ"なのかもしれません。
酸素は人間が生きるのになくてはならないけれど、純粋な酸素100%の中では人は生きられないように、芸術も究極まで純化されると得体の知れない嫌悪感を呼び起こすということなのかもしれません。
気持ち良くもないけれど、訳も分からないままに人を引きずりこむ力を持っています。冒頭のあまりに有名なエグイ場面など、思わず、目を逸らしてしまいましたが、何故、続きを見てしまったのか?
正直、心を揺さぶられたとか、そういった感動のようなものはありませんでした。宣伝文句から想像されるものよりもずっと衝撃度が低いのは、製作後の80年近い年月ゆえなのかもしれません。けれど、妙に忘れられない印象的な作品となりそうです。
本作は、サルヴァドール・ダリが脚本に参加していることでも有名ですが、全体に、いかにもダリという雰囲気に溢れています。
ダリの絵といえば、あまりに個性的な鮮やかな色彩が印象的なのですが、本作はモノクロ。ダリの大きな特色でもある色彩を失ってもなおダリはダリ。それこそがダリの天才たる所以なのかもしれません。