2004年に製作された作品ですが、現在、渋谷ユーロスペースで、限定上映されています。2月9日、10日、11日、16日、17日の5日間のみ。毎日、11時からの1回のみ。日本では劇場初公開のようです。


革命家でもあったヴォリス・サビンコフがロープシンというペンネームで発表した自伝的な内容の同名小説を映画化した作品です。原作は未読です。


ロマノフ王朝末期のロシア。爛熟した貴族社会の中、社会の変革を求める勢力が台頭し始めます。ロシアに住むイギリス人革命家のジョージは、かなわぬ恋に身を焦がしながら、大公暗殺のために活動していました。何度かあわやというところまでいくのですが、その度に未遂に終わり、計画中止がささやかれながらも、ジョージは大公暗殺を成し遂げようと突き進み...。


イギリス人のジョージが、ロシアにやってきて、そして、革命に身を投じることなり、大公暗殺という大役を担うことになります。異国人として革命に力を注ごうとした彼の心の内。大公暗殺に固執すること。それは、テロ自体が自己目的化すること。それを自覚しながらも、そこから降りることのできないジョージ。


テロの必然とも言える仲間の死。そして、巻き添えにされる無関係な人々。テロの現場に残されたものは、本来、革命が救うべき人々の無残な遺体...。


革命に身を捧げたはずのジョージにも、恋する心は残っており、かなわぬ恋に身を焦がし、恋する女性の夫に銃を向けます。革命という"正義"の理屈がある暗殺と私怨としか言えない殺人。社会を変えようとする理想に燃えて革命に身を投じたはずのジョージは、大公暗殺を巡る活動により、変化していきます。


帝政末期の退廃した雰囲気が見事に映像に表現されていました。全体に、登場人物たちの心情などについて説明の少ない作品で、ジョージの表情にも大きな変化は見られませんが、映像には緊張感があり、そこに生きる人々、その中でもがく革命家の心情がピリピリと伝わってきました。


公開館も公開日も限定されていて、なかなか、観ることは難しいかもしれない作品ですが、なかなか味わいのある佳作でした。