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アカルイミライ 通常版


雄二と守はおしぼり工場でのアルバイト仲間。行き場のない苛立ちを抱える雄二に対し、ストップをかける穏やかな守は、雄二にとって、唯一、心を許せる相手でした。ある夜、雄二は、突然、暴力的な衝動に駆られ、おしぼり工場の社長宅へ鉄パイプを持って押し入ります。けれど、そこは、既に血の海で、その中には、社長夫婦の死体がありました。そして、その夜から、守の行方がわからなくなり...。


穏やかだけれど謎めいた雰囲気の守。普通の青年のようでふとしたきっかけで荒れだすと手が付けられなくなる雄二。どちらにも、外見から図りにくい面があり、それは、神秘的な優雅さを湛えた姿で水中を揺らめきながら人間を殺せる毒を抱え持つクラゲにも似ています。


守が大切に飼っていたクラゲのフワフワとした動きが、雄二を含めた行き場のない若者たちの現実を投影しているようでもありました。


クラゲのような若者たちに不用意に触れようとするとどうなるか。おしぼり工場の社長夫妻は守に殺され、守の父はクラゲに刺されます。けれど、守の父のように、真剣に若者に向き合おうとした時、そこには、何か、若者を変える力が働きます。時代は、上の世代から下の世代へ受け継がれていく。上の世代が淘汰されることではじめて若者は世の中の主人公になっていくものかもしれません。


自分の行く道を見つけられず、思うようにならない現実に苛立ちながら過ごす日々。そして、その中で起こる爆発。あちこちで壁にぶつかりながら、それでも、少しずつ、変化していく。それが成長と呼べるものかどうかは別として...。そして、その先にある「ミライ」は、果たして、「アカルイ」のかどうか...。


ラスト直前で、どうやら、自分の進むべき道を見出したような雄二。そこで、主役は、雄二から、ゲバラの顔写真入のTシャツを着た若者グループに移ります。次に、行くべき道を見つけなければならないのは、彼らということなのでしょうか。


クラゲのしっとりとした艶めかしい雰囲気と光と闇のコントラストのきれいな乾いた雰囲気の映像が上手く組み合わされ印象的な映像となっていました。


私の偏見もあるのだろうとは思いますが、オダギリジョーと浅野忠信の組み合わせということで、難解なやや独りよがりな作品であることを予想していましたが、その部分については、ギリギリのところで、普通の世界に留まっているような気がします。


ストーリーを追うというよりは、雰囲気と映像の空気に身をゆだねて楽しむ作品と言えるでしょう。不思議に印象的で心に刺さるものが残る作品です。



アカルイミライ@映画生活