20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
愛と喝采の日々
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愛と喝采の日々



バレエ映画の古典的名作と言えるでしょう。


かつて、同じバレエ団のプリマドンナとして、ライバル関係にあったディーディーとエマ。ディーディーは、結婚のため、若くしてダンサーを引退し、現在では、夫と3人の子どもに囲まれた生活をしています。エマは、バレエ一筋の人生を歩み、今も現役のプリマとして活躍中。二人は、20年振りに再会します。かつての母親と同じようにバレリーナとしての成功を夢見るディーディーの娘、エミリアは、エマにその才能を見出され、エマ、そして、かつてのディーディーも所属していたバレエ団に入団、その中で、頭角を現していきます。エマとの関係を深めていくエミリアの姿を見つめるディーディーの胸中は複雑で...。


今となっては、女性だから「仕事か愛か」の選択を迫られるという発想自体が古臭く思えます。今だったら、仕事も愛も家庭もという道を見出すこともできるのでしょう。


ただ、人生を振り返る時、「あの時、もう一つの道を選択していたら...」という想いが去来することは、誰にでもあることでしょう。


時代の違いもあるのでしょう。エミリアは、母親とは違い、バレエも恋も諦めようとはしません。そして、バレエの師でもあった母親よりも、エマを尊敬するようになります。エマとの関係を深めていくエミリアの姿を目の当たりにして、ディーディーは、かつての自身の選択を後悔する気持ちが強まります。そして、エミリアがバレエで生きていく道を選びながら、同時に、恋愛も諦めようとはしない姿に、かつて二つしかないと思っていた選択肢が、実は、他にもあったかもしれないという迷いが生じたのかもしれません。


自分を愛し、理解してくれる夫と三人の子どもに恵まれた生活は幸せなもの。世界的に有名なバレエ団でプリマドンナとして長く君臨できたことも幸せなこと。けれど、幸せを手にしていても、その上を望んでしまうのも人の常。その辺りの複雑な気持ちが、ディーディー^とエマの中で交錯します。


さらに、二人が、それぞれの幸せを支えたものとの関係を変えざるを得ない時期に来ていること。ディーディーの母親としての幸せは、エミリアの母親離れにより、揺さぶられます。エマのプリマドンナとしての幸せは、"老い"という問題と直面します。


誰でも、永遠に絶頂にいることはできません。いつかは、舞台の中央から降りなければならない時がきます。そこでの輝きが強ければ強いほど、そこから降りる時が辛くなるもの。本作では、かつて、華々しく活躍していた場所から降りた人たちの姿も追いながら、二人のこれからを描いています。


今の自分の元となったかつての選択、そして、第一線を退いた後の人生。それは、その人の人生を大きく決定付ける要素でもあります。二人の20年前の人生の岐路と、現在、迎えつつある岐路を重ねて描くことで、二人の人生全体を考えさせられる作品となっています。


シャーリー・マクレーンとアン・バンクロフトという二人のベテラン女優のぶつかり合いは見応えありました。長年、溜まった想いをぶつけ合う二人。そして、互いの気持ちを出し切った後に訪れる和解。かつて、ライバルだったからこそすれ違いぶつかり合う部分と、同じ道を究めたもの同士だからこそ分かり合える部分。二人の微妙な位置とその友情が心に沁みます。


もちろん、華麗な舞踏シーンも見応えありました。バレエの魅力にとっぷりと浸ることができました。




愛と喝采の日々@映画生活