ジェネオン エンタテインメント
アンフィニッシュ・ライフ


それぞれ、心に傷を抱えた者同士が、新しい家族として再生していく物語です。


夫のグリフィンを自分の運転のミスで死なせてしまったジーンは、同棲している恋人のゲイリーの暴力に耐え切れなくなり、11歳の娘、グリフを連れて家を出ます。けれど、行くところがなく、亡くなった夫の父、アイナーの元に身を寄せます。アイナーは、息子を死なせてしまったジーンを許せずにいましたが、それでも、二人に部屋を提供します。こうして、ジーン、グリフ、アイナー、そして、アイナーの牧場で生活と仕事をアイナーと共にしていたミッチの共同生活が始まり...。


ジーンとアイナーの間に横たわるグリフィスの死を巡る気持ちの行き違い。暴力を振るうゲイリーからなかなか逃げられずにいた母親の態度に納得のいかないものを感じていたグリフ。それぞれの中に、相手を許そうという気持ちや相手を思い遣る気持ちがないわけではないのに、なかなか、通じ合えない心。


グリフを中心において、徐々に、溶け合うジーンとアイナーの心。グリフィンを介した義理の関係とはいえ親子だったジーンとアイナー、血の繋がった母と娘であるジーンとグリフ、祖父と孫であるアイナーとグリフが、繋がっていき、ミッチとともに、新しい家族を築いていく過程が丁寧に描かれ、心に沁みます。


ジーンに対する憎しみを捨てきれずにいるものの、ジーンを心配し、ジーンを追ってきた元恋人の出現に対策を練るアイナー。アイナーのジーンに対する複雑な思いが感じられるシーンです。


ジーンとアイナーの間に、グリフィンの死を巡ってできていた硬い壁をグリフの存在とミッチの言葉が溶かしていく展開が良かったです。そこに、グリフの成長と、ミッチ自身が自分の傷を癒していく過程が重なり、それぞれの癒しと成長の物語が胸に響きました。ミッチの科白は重みがあり、一言一言が残ります。


そして、登場人物たちを包み込む、ワイオミングの大自然が美しく、それこそ、心が癒される感じがしました。


まぁ、ありがちなストーリーではありますし、予定調和的な都合のよさも感じられますが、手堅くほんわかヒューマンドラマの王道をいったという感じでしょうか。安心して作品の世界に浸れるものに仕上がっていました。


アイナーが、保安官のクレインに「侵入者を銃で撃ったらどうなるか」と尋ねた時に、即座に「正当防衛」という答えが返ってきたのは、のけぞりたくなるほど、あまりにもアメリカ的でした。


日本では未公開だと思いますが、DVDを見かけ、ロバート・レッドフォード、モーガン・フリーマンといった出演者の名前を見て、そして、ラッセル・ハルストレム監督の作品だということで、これは観なければと手に取った作品です。背景に拡がるワイオミングの自然など、映画館の大きなスクリーンで観たいものですが...。




アンフィニッシュ・ライフ@映画生活