ジェネオン エンタテインメント
暗いところで待ち合わせ プレミアム・エディション


乙一の原作を映画化した作品です。


交通事故により視力を失ったミチルは父親と二人で生活していました。けれど、その父が突然亡くなり、一人残されます。ミチルは、親戚の反対を押し切って一人暮らしを始めました。ミチルの家のすぐそばには駅があり、彼女の家の窓からはホームが見えます。ある日、その駅を利用して通勤している男性がホームから転落し、入ってきた列車にはねられて死亡します。その直後、一人の男性がミチルの家に忍び込みます。その男性は、ミチルに気付かれないよう、息を潜めて居間で生活し始めました。彼は、死んだ男性の同僚で、男性がホームから転落した後、駅から逃走して殺人の容疑をかけられていたオオイシアキヒロでした。やがて、ミチルも、アキヒロの存在を感じるようになり...。


ミチルが視力を失っているということを単に「ハンディを乗り越えて頑張っている障害者」といった形でなく、上手く、サスペンスの素材として活かしているところが良かったと思います。しかも、まだ点字を十分に読めない、一人での外出もままならないミチル。だからこそ、アキヒロの存在に気付くまでに時間がかかることも納得できます。その辺りの設定が上手く、作品の世界に引き込まれました。


果たして、アキヒロは、本当に同僚を殺したのか?この辺りも、アキヒロが犯人でない可能性を微妙に臭わせることで、謎解きの面白さもありました。そして、アキヒロがミチルの家に入り込んだばかりの頃の緊張感に溢れたピリピリした雰囲気が、徐々に落ち着き、和やかな感じになっていく。その辺りの、孤独な二人が言葉の無い静かな世界の中で徐々に癒され、力づけられていく過程が丁寧に描かれていて最後まで飽きずに観ることができました。


それぞれが、別々の理由で、世間に受け容れられない自分を意識している。そして、そこから、なかなか一歩踏み出すことができずにいる。そんな二人の成長が感じられ、気持ちよく見終えることができます。


ミチルの生活が、現実の家で生活しているというよりは、きれいに整えらて見栄えはするものの生活はしにくそうなモデルルームで生活しているような雰囲気で、今ひとつ生の生活感が感じられなかった点が、少々、気にはなりましたが、出演陣の演技もそれぞれに見事で、見応えのある作品でした。


派手さはありませんが、観ておきたい作品の一つです。




暗いところで待ち合わせ@映画生活