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アキハバラ@DEEP


石田衣良の同名小説を映画化した作品です。原作は未読です。


ページたち5人は、抱えていた悩みについてカリスマサイトの主宰者であるユイに相談することで立ち直っていった者同士。彼らは、ウェブ製作会社「アキハバラ@DEEP」を立ち上げます。彼らの事業は、「デジタル・キャピラツ」という巨大IT企業の社長である中込と知り合ったことで順調に滑り出します。彼らが開発に乗り出した、革命的な検索エンジン「クルーク」に目をつけた中込は、「クルーク」で一儲けしようと企み...。


数年来、注目を集めているアキバ系のオタクな人々。それぞれに悩みや傷を抱えたオタッキーな5人が集まっているのですが、それぞれの描き方が、どうも、薄く、リアリティに欠けてしまっています。世間からははみ出してしまうような個性的な部分や、グループで協力し合おうと思いつつも自分のこだわりを捨てられない悩みなど、オタクであるためのハンディのようなものが十分に描かれず、皆、とても協調性豊かな好青年になってしまっていて、そのために、個々の魅力が十分に感じられませんでした。


その辺りがもっと丁寧に描かれていると、「実際にそんな人が近くにいたら傍迷惑」と思いながらも、登場人物に可愛らしさを感じたり、共感できたりしたのではないかと思います。


彼らの行動も彼らと敵対する巨大IT企業の側も、行動が無用心というか無謀というか...。大金もかかっている争いなのだから、普通、もっと真剣に、命懸で取り組むのではないかと思います。その辺りでも双方の必死さのようなものが今ひとつ感じられませんでした。


IT企業相手の戦い方にしても、暴力に頼るのではなく、PCが得意なアキバ系オタクとしての個性を生かしたオリジナリティの高い戦い方をしても良かったのではないかと思いました。まぁ、この点については、原作がある作品なので、映画というよりは、原作の側の問題かもしれませんが...。


オタクな人々の内面や言動にしも、小さな会社と巨大企業の戦いにしても、新しい検索エンジンの開発にしても、素材としては面白いものだったと思います。その折角の素材が活かせていないようで、何とも残念です。


そして、先天性の色素欠乏症のため、紫外線を浴びることができず、外出時には、紫外線防御スーツを着なければならないイザムが、何故か、日中、日が照っている外にいる時に、ヘルメットのフェイスガードを上げて顔をさらしたり、首筋の肌の部分が見え隠れしたりするのも気になって仕方ありませんでした。


巨大IT企業の社長、中込を演じた佐々木蔵之介は怪演でしたし、寺島しのぶも雰囲気ありました。山田優と寺島しのぶの格闘シーンも本作でしか見られないものでしょうし、なかなか迫力もありました。ところどころ、目を引かれる場面もあったのですが...。




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