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プルーフ・オブ・マイ・ライフ

かつては偉大な数学者として名声を得ていたが、精神を病み療養生活を送っている父。そして、父と生活を共にしていた娘、キャサリン。その父の死後、葬儀や父の死に関する様々な処理をするために久し振りに妹を訪ねてきた姉、クレア。父に教えを受けており、キャサリンに想いを寄せるハロルド。


jほとんど全編が、その4人の登場人物によって進行していきます。限られた登場人物と狭い空間で繰り広げられる濃密な心理劇でした。


父が残した膨大なノート。そのほとんどは、父の狂気を示す支離滅裂なメモの羅列。父の机の引き出しにしまわれていた一冊には、数学の歴史を変えるかもしれないというような証明。そして、そのノートは自分が書いたと主張するキャサリン。


何故、最初、問題のノートを父のものとしてハロルドに渡そうとしていたキャサリンが、自分のものだと主張したのか。そして、さらに、その言葉を覆したのか。


キャサリンには複雑な想いがあったのだと思います。キャサリンにとって、父と生活した日々が父のために良かったのだと思うためには、父が歴史的な業績を残せる程の回復を示した時期があったという事実が必要。そして、その業績が父と自分の共同作業ということになれば、キャサリンは、父が優れた数学者であったことを誇りに思うことができ、その父と似ている自分に自信を持つこともでき、大学も中退して父の看病をした自分の選択が正しかったと信じることができる。けれど、一方で、父亡き後のキャサリンが、唯一信じられる相手であるハロルドの自分への信頼も試したかった。そのための行為が、「父の引き出しから出てきたノートは自分のもの」だと主張するという行為だったのでしょう。


キャサリンの苛立ちは、偉大な父を持ち、その父と同じ道を歩もうとした子の悩み、そして、精神を病み支離滅裂な自分の考えを大発見だと信じる父の哀れな姿に自分を重ねざるを得ない不安からくるものだったかもしれません。それにしても、そのイライラの激しさは、少々、説得力に欠けるように思えました。もう少し、キャサリンのヒステリックな言動の背景が描かれると、もっと納得できたのではないかと思います。


そして、クレアは、何故、それ程までにキャサリンを否定しなければならなかったのか、ハロルドは、何故、それ程までにキャサリンを支えようとしたのか。現在のそれぞれの心理状態の背景にあるものが分かり難く、そのために、全体的な説得力に欠けてしまったような気がして残念でした。


全体的に、分からなくはないのだけど、もう一歩、描き込んで欲しかった。押しが足りないというか、隔靴掻痒というか、ちょっと残念な作品でした。



公式HP

http://c.gyao.jp/movie/proofofmylife/



プルーフ・オブ・マイ・ライフ@映画生活