国際色豊かな列車の旅が描かれます。
飛行機で帰るはずが、空港の閉鎖により列車の旅を余儀なくされた老教授のロマンス。気難しい老未亡人の世話をする青年。仲間と積み立てをして資金を作りサッカーの試合を観に行こうとしている青年たち。そして、この3つのストーリーを繋ぐ存在となっている家族全員分の切符を買えないままに列車に乗り込む移民の家族。
いくつもの国が国境を接するヨーロッパを走る列車は、乗客の国籍も様々。飛び交う言葉も様々。この辺りの雰囲気は、日本に住む私たちにとって、なかなか実感し難い部分かもしれません。
貧しい移民の家族が、3つのストーリーをリレーのバトンのように繋ぎます。オムニバスのような形で作られながら、一本の作品のように3つの物語を繋ぐのが、移民の家族というところにも製作者の意図が感じられます。そして、何度かの危機を周囲の行為に支えられながら乗り越えていく彼らの姿に、製作者の願いが込められているように思えました。
速さが移動手段を選ぶ時の大きなポイントになることは確かです。人の歴史の中でも、常に移動手段のスピードアップが求められてきました。けれど、飛行機がごくありふれた日常的な移動手段になってしまった今、こうした列車の旅には、ある種の郷愁と共に、ドラマが感じられます。
舞台となっている列車の特徴を上手く活かしながら、現代的な問題を織り込み、将来への希望も描かれています。
やや、冗長に感じられる部分もありましたし、それ程、ドラマチックな展開があるわけでもありませんでしたけれど、登場人物たちそれぞれの心情の変化や成長を見守る視点が暖かく心に沁みる作品となっていました。
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