美奈子は父親と二人で暮らす中学生。母は、美奈子の父とは違う男性の間に美奈子の妹を妊娠し、二人の家族を捨てて家を出ます。美奈子は、思春期の女の子の常ではあるでしょうけれど、父親とはしっくりいっていません。友人はいますが、今ひとつ輪の中に入りきれない自分を感じる場面も多く、一人で過ごすことの多い、物静かな少女となっています。ある日、母が再び離婚し、美奈子の異父妹の優と二人、美奈子たちの近くで生活していることを知ります。小学校一年生の優は、母の仕事の都合で団地の部屋で一人過ごすことが多い生活に寂しさを感じています。そんな二人が出会い...。


美奈子にしてみれば、優は、母が自分を捨てた原因となった存在。そして、母は自分を捨てて優を選んだわけで、優に対して殺意を見せる場面もあります。


やがて、優も、自分と美奈子との関係を知るようになります。


大きな哀しみを抱えた二人の魂が、複雑な感情がありながらも、徐々に溶け合っていく様子が描かれていきます。二人のそれぞれの魂の中に沈殿した哀しみが、少しずつ、解きほぐされ昇華されていきます。心の中に深く沈んだ大きな悲しみは言葉で表現するにはあまりに重いのでしょう。本作で語られる言葉はあまりありません。けれど、言葉にできないほどの大きく深い悲しみを映像が伝えてくれるようです。


冒頭、美奈子の部屋の窓からかすかに射し込む光、二人が過ごした古家に射し込む光...。決して強くはないのですが、確かな一筋の光が作品を印象付けます。


ままならない人生、それぞれの運命を受け入れていく過程に、それぞれの成長が感じられます。子どもが大きく成長する過程に親が手を貸す余地などほとんどないのかもしれません。子どもといえども、自分の運命に降りかかってくる困難は自分の力で乗り越えていくしかないのかもしれません。そして、小さな子どもではあっても、その力を、その可能性を持っているものなのかもしれません。






[以下、ネタバレあり]






母から貰って優が大切に持っている口紅を美奈子が優にぬってやるシーン、その同じ口紅を塗って美奈子が歩き出すラストシーン。口紅が美奈子の母への赦しを見事に演出しています。


ラスト、二人は、それぞれの道を別々に歩き出します。その歩調には、それぞれの確かな成長が感じられます。その先には、恐らく光が射しているのだろうと予感させられ、あたたかな気持ちで観終えることができました。




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水の花@映画生活