マーク ストランド, Mark Strand, 村上 春樹
犬の人生



表題作を始めとするマーク・ストランドの短編小説を14編集めた作品集です。


何とも不思議な雰囲気を持つ小説ばかりです。「何を言っているのだろう?」「だから何?」と言いたくなるような作品なのに、何故か心に引っかかる、もう一度読み返してみたくなる...。形の見えない、捉えどころのない何かを心に残していく作品です。


作者のマーク・ストランドは詩人として有名な人だそうですが、小説というよりも、詩的な作風になっているようです。


これだけ、ゆったりとした、時として間の抜けたようなテンポで進む(あるのかないのかわからないような)ストーリーと何がいいたいのか分からないよう展開で、きちんと印象を残すというのは、やはり、作者の表現力というもののなせる技なのでしょう。


深く暗い穴に引きずり込まれるような不安と母の子宮に守られるような安心感と、不思議な味わいの短編集でした。


沢山の人に薦めたい本というより、どこかでこの本に偶然出合った人とこの本について語り合ってみたいと思えるような短編集です。