きむらゆういち作のベストセラーとなった絵本が原作の映画です。


ある、激しい嵐の夜、野原の小屋に逃げ込んだ山羊のメイと、狼のガブが出会います。真っ暗な小屋の中で何も見えず、強い雨音で音も良く聞こえず、風邪のために鼻も効かず...、お互い相手の姿形が全くわからないままに相手に共感を覚え、友情を感じるようになります。二人は、相手の姿を見ないままに、翌日、再会する約束をして別れます。そして、翌日、お互いに相手を見て驚きますが、深く惹かれ合うようになります。けれど、本来、狼にとって山羊は餌、二人の交際が、それぞれの仲間の知れるところとなり、それぞれ、仲間から非難されるようになり...。


本来、食物連鎖からは、考えられない狼と山羊の友情。狼が山羊を食べるのは、生きるための行為で、悪いことでも何でもなく、生存のために必要な行為。ある意味、自然の摂理に反する関係なわけですが、この部分に受け入れにくさを感じてしまうか、それすらも乗り越えてしまう相手への気持ちの強さに思いを寄せるかは、微妙なところです。作品の意図は、後者なのでしょう。けれど、それを納得させるだけの材料、というか、二人の友情(愛情?)の強さが生まれる背景の描き方に弱かったのだろうと思います。


ガブの声、中村獅童は、新たに声優しての才能を見せてくれています。ただ、メイの成宮寛貴の声は、メイの声としては太すぎて、イメージと合わない感じがしました。メイは、雄の山羊なのですが、名前からの印象も、物語の中での役どころも女性的な感じになっています。女性の声の方がメイらしく感じられたのではないかと思いました。


柔らかくほのぼのとした雰囲気の映像は、綺麗でとても良かったです。子どもと一緒に安心して見られる作品です。




[以下、ネタバレあり]







この絵本、もともとは、6巻で完結していたもので、悲劇的な運命により二人が引き裂かれて終わります。ところが、映画を観ていたら、そこで話が終わらず、その後に、どんでん返し。原作者が脚本を書いているので、原作通りのストーリー展開を予想していただけに驚いたのですが、その後、7巻目となる続編「まんげつのよるに」が刊行されていたことを知りました。


6巻の悲しいラストでは、結構、泣かされたりしたものです。絵本を読んでいたときは、ハッピーエンドにならないことを予感しつつも、ハッピーエンドへの期待も持ちながら読み進めていたので、「やっぱり、ダメか...」と、少々、がっかりした面もあったのですが、もともと無理のある二人の関係だけに、納得してもいたので、この続編部分の追加には、驚きと戸惑いと、何となく裏切られたような思いもありました。


映画は、子どもの観客をかなり意識していたでしょうし、そうなるとハッピーエンドの方が受け入れられやすいでしょうし、映画化が決まったのと続編のどちらが早いのかはわかりませんが、やむを得ないことだったとも思わないではないのですが...。


原作を読んでいなければ、すんなりと受け入れることができたラストなのかもしれませんが、ちょっと引っかかってしまいました。


そして、冷静に考えれば、このハッピーエンドの後にこそ、苦難が待っていそうな二人の前途。また、新たに続編が出る、ということなのかも...。




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あらしのよるに@映画生活