先月半ばまでユーロスペースがあった場所にできたシアターN渋谷に行ってきました。ユーロスペース時代と大きく変わってはいませんでしたが、ロビーのカウンターの位置や雰囲気は、以前より、少しすっきりした感じがしました。


オープニング作品の一つ、ブレイキング・ニュースを観て来ました。


ユーロスペースも、なかなかラインナップの魅力的な映画館でしたから、その後にできた映画館の、しかも、オープニング作品ということで、期待もしていたのですが、なかなか、面白かったです。


ある日の朝、香港の街中で、銀行強盗団と警察の銃撃戦が始まります。激しい攻防戦の中、犯人に銃を向けられた警察官の一人が、撃たれることを恐れて犯人に命乞いをしてしまいます。その場に居合わせたマスコミにその映像を撮られ、その映像をメディアに流されたために世間の非難を浴びます。市民の信頼を取り戻すため、副総監のウォンは、組織犯罪課の新任指揮官レベッカが発案した「犯人逮捕の瞬間という最高のショー」を演出するという大胆なメディア戦略を採用し...。


警察側がメディアを利用すれば、犯人側も対抗してメディアに警察側に不利な映像を流し、虚々実々の心理戦が繰り広げられます。


ストーリー展開は、結構、楽しめましたが、人物描写は、やや深みに欠ける感じもしました。銀行強盗団のリーダーにしても、極悪非道でためらいもなく次々人を殺すわりには、何となく人が良さ気で...。逃げ込んだアパートで出合った殺し屋と仲良くなったり、一緒に料理に腕を振るったり...。その落差の背景についても特に触れられていませんでしたし...。


でも、それを差し引いても面白かったと思います。ところどころに挟まれていた、気の利いた会話も良かったですし、何よりも、昼食のシーンが印象的でした。激しい攻防戦を繰り広げるという状況の中でも、しっかり食べている映像に、中国人の食に対するこだわりのようなものを感じました。この食へのこだわりが世界に冠たる中華料理の世界を作り上げたのだと、ヘンなところで感動しました。


そして、冒頭から繰り広げられる銃撃戦も、スピード感があって、迫力ありました。かなりの至近距離で撃ち合っている割には人に当たらない感じもしないではありませんでしたが...。(人に当たらない割には、車にはよく当たっていました。)


「公正中立」がメディアの使命、とは言っても、映像なり、言葉なりで現実を切り取る以上、そこに、何らかの取捨選択は行われるのですから、どうしても、伝える側の色が入ります。絶対に公正中立で無色の情報などあり得ないわけで...。


それでも、映像の力は強く、つい目で見たものを事実と信じてしまいたくなるのですが...。


自分が見ている(見せられている?)ものをどこまで事実と受け止めて良いのか、考えさせられる作品でもありました。




[以下、ネタバレあり]








強盗団が逃げ込んだアパートには、偶然、殺し屋の二人組みがいて、逃げ込んだ強盗壇と殺し屋コンビの関係なども描かれるのですが、警察の知らないところで、この二グループが結びついたものの、そのことが警察側の作戦に影響を与えるという雰囲気もなかったり、人質になった父子三人が画面から退場するのが意外にあっさりだったり...結構、突っ込みどころはありました。


細かいところは気にせず、スピード感、銃撃戦の迫力、ストーリー展開を楽しんで観ることをお勧めします。






公式HP

http://www.breakingnews.jp



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