私は父のことが
小さいころから苦手でした。

とても難しい人でした。
ですが、私も成長して様々な情報を得たり
学んだりするうちに

父が軽い発達障害をもっているのではないか
と気が付きました。

そう考えると
今までの父の難しさは
納得がいくのです。

これまでは
父のマイナス面ばかりを見てきました。
人の気持ちを感じ取ることが苦手で
病気になった母を
気のきいた言葉で励ます、
なんて最も苦手なことでした。

心配だと
逆に母に怒る始末。

どうしていいのか、
どんな言葉をかけていいのか
わからないのです。

だから私は、
父は母のことを
本当に心配しているのだろうか、
と腹立たしく思ったことが
何度もありました。

でも、母が癌になり
気功にも入門していない
手術後に退院した直後のこと。

最後の望みをかけて
母が陽子線治療をやりたい
と言ったのです。
そのとき、調べてみると
1回の照射に何十万もかかり、
完全に消えるまでやるのには、
400万~500万かかるのです。

私はそのとき、父に
「こんなにお金がかかるんだよ。
それでもやるの?」
と言いました。

すると父は、一言
「命にはかえられん」
と言ったのです。

まさか、こんな言葉が
父の口から出るとは思っていなかったので
息が止まりそうでした。

そして、
これが父の本心なのだと
思いました。
ちっとも優しい言葉をかけられず、
逆に怒ってばかり。

でも、やはり心の底では
母を必要としていることが
わかりました。

結局、リンパに転移している
母には、陽子線治療はできないと
医師に判断され、あきらめました。

ですが、それでよかったと思っています。
すべての医療による治療の道が
ふさがれたことで
母が気功に専念できたからです。

そして、
父のその言葉を聞けたからです。

その後も本当に
父には苦労させられていますが、
何かあるたびに、
父が言った
「命ににはかえられん」
という言葉を思い出して

父と向き合っていこうと
がんばっています。