◆類洞交通◆ | 日々是成長☆フォンタン娘と甘ったれ兄さん☆

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重症先天性心疾患(純型肺動脈閉鎖症)でフォンタン術後11年目、運動制限ありまくりな小学生の娘と、マザコン気味で甘ったれな高校生の息子。そんな兄妹の日々の記録☆

たまたまある論文を見付けて久々に頭を使ったので、そのアウトプット記事です。


今回は娘ちゃんの疾患の中で一番まれで一番謎で一番読めない『類洞交通』について。


かなりレアな疾患のため情報がほとんどなく、あっても「純型に類洞があったら重症」とか「類洞のせいで冠循環が右室依存だったらフォンタン」とかその程度で、そもそも類洞交通ってなんぞや?がずーっと謎だった。


娘ちゃんの他の疾患に関しては「作る段階でうまくいかなかったんだね」で納得できるんだけど、類洞交通って本来はないもので他の先天性心疾患ではほとんど聞いたことがないから、もう存在自体が謎すぎた。


もちろん我が子にある疾患だからどんな状態が類洞交通なのかはわかってるけど、何がどうしてこうなった?ってのが気になるのが私なんだよね。


で、最近論文を見付けて久々に読み込んで(日本語の論文ですよ)、それで長年の謎が解けたというか、気になっていたことが解消されたというかそんな感じになったので、せっかくだからまとめておきたいなと。


かなりマニアックな話になるので、完全に私のための備忘録だと思ってくださいね。


論文は当たり前だけど素人にはかなり難しく、私なりの勝手な解釈が大いに含まれるので、参考にしたいと思われる方はご注意下さい。


ではでは。


<類洞交通(sinusoidal communication)とは?>


心筋を貫いて冠動脈と右心室を繋いでしまっている穴、もしくはその疾患のこと。


純型肺動脈閉鎖症の約半数くらいに併発している。


娘ちゃんの病院では『冠動脈―右室交通』と表記されることが多い。


そもそも「類洞」とはなんじゃい?というのが私の一番の疑問。


検索すると必ず出てくるWikipedia様によると肝臓の話になってしまって、心臓の「し」の字も出てこないため謎は深まるばかり。


で、今回その論文を見つけたことによって謎は解けた。


そもそも「類洞」ってのは細胞間の隙間みたいなものらしい。


論文の中から関係あるところだけを引用させてもらいます。


『心臓発生の初期段階において心筋は心内腔の類洞と呼ばれる肉柱間の間隙から拡散によって心腔内血液から酸素供給を受ける。しかし心臓発生の進行とともに心筋の厚みが増すと心筋の外膜側は酸素供給不足となることから、心外膜側に冠動脈が形成され最終的には心筋への酸素供給は冠動脈が全て取って代わるようになる。』


いやもうね、これを初めて読んだとき「類洞キターーーーー!!!」と叫びそうになったよ。


『純型肺動脈閉鎖における冠動脈の類洞交通は、発生過程での肺動脈弁閉鎖により右室内圧が高圧となったために、本来消失するはずであった類洞が残存し冠動脈との交通が残存した状態と考えられている。』


これこれこれーーー!


知りたかったのはまさにこれーーー!


『類洞を介した右室から冠動脈への血流量が多い場合には、冠動脈の正常な発生を障害し、冠動脈の狭窄や離断を合併する。』


バリバリ狭窄&離断してますー!


『このように冠血流が大動脈からの順行性血流でなく、右室からの血流に依存する状態を右室依存型冠循環と呼ぶ。』


バリバリ右室依存ですー!


本当にもう、ここまで書かれているものを読んだのは初めてで、なんか泣きそうになったよ。


私なりに解釈すると、胎児期に心臓が作られる段階で本来なら密になって埋まっていくはずの心筋の隙間が、右心室が高圧なせいで密になりきれずに隙間が残って冠動脈と繋がっちゃったのが「類洞交通」ってこと。


純型肺動脈閉鎖は今の書類上の正式名称である「心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症」が示す通り、肺動脈が閉鎖している上に心室中隔に穴(欠損)はない。


余談ですが、変換間違いだとは思うがブログなどで「中隔」を「中核」と表記している人をよく見かけるけど、間違ってますよ。


「心室もしくは心房の真ん中を隔てる壁」ですからね。


ついでに言うと類洞交通の「洞」も「同」ではないです。


洞窟の「洞」、あなです。


…話を戻して。


肺動脈が閉鎖していて心室中隔欠損もないということは静脈血は三尖弁から入ってくるばかりで、逆流する以外の逃げ道はない。


だから右室内が高圧になる。


右室圧が高圧なせいで心臓の発生段階において類洞が塞がらず、冠動脈の正常な発生が邪魔されて冠動脈異常の完成。


そもそも冠動脈の発生は木の根っこのように大動脈側から伸びてくるわけではなくて、末梢からまばらに形成されていくらしい。


そのまばらな血管が収束と連結を繰り返して冠動脈の基となり、最終的に大動脈と接合するそうな。


どうして冠動脈に途切れた箇所やまた別の穴から出てくる箇所があるのかずっと謎だったけど、これで解けた。


正確には途切れたわけではなく、繋がれなかった冠動脈の基たちってこと。


それが塞がらなかった類洞交通によって右心室と繋がってることで血流を確保できてる。


なるべくしてなったのだと思うが、ある意味うまくできてる。


これまで5年間主治医や執刀医から説明されてきた「右室が低形成であるほど類洞交通が重度になる傾向にある」とか「心筋の中でどこがどう繋がってるかわからないから、下手に手は出せない」といった言葉の本当の意味がよくわかった。


類洞交通って、酸素不足によって右心室側か冠動脈側のどちらかから伸びてきた側副みたいな異常血管なのかと思ってた。


違ったよ。


こんなことがまだ妊娠にも気付いてないような妊娠1ヶ月~2ヶ月の間に起きてるなんてお手上げだわ。


この論文のテーマは類洞交通や純型肺動脈閉鎖ではなくて、『先天性冠動脈疾患』。


そう、娘ちゃんは先天性冠動脈疾患でもあったのだ。


わかってたけど、はっきりとした言葉で明確に言われたことはないし、どんな書類にもそこまで書かれたことはないし、でも状態としてはわかっていたことだからスッキリした。


娘ちゃんの心臓の場合、類洞交通が大きいのから小さいのまでいくつもあり、左右の心室の圧力がほぼ同圧であるため大動脈からの順行性血流と右心室からの逆行性血流が拍動の度に同じ勢いで行ったり来たりしていて、そのせいで冠動脈自体が異様に太くなっている。


執刀医曰く、オペ時に肉眼で確認したところ「もりもりっとしていた」そうな。


さらにその行ったり来たりする血流が多過ぎて勢いが良すぎて、肝心の毛細血管にはそのおこぼれが流れてる程度に過ぎない。


心カテ検査のときに大動脈側から造影しても毛細血管はほとんど写らず、右心室の形がはっきりわかるほど写る。


常に心筋虚血状態のため、それを補うために心拍数が多い。


冠動脈が途中で途切れてる箇所もある。


途中から出てきて右心室からの血流だけで成り立ってる箇所もある。


狭窄もある。


右室圧がなければ成り立たない。


よって右室の減圧を意味する二心室修復も1.5心室もできない。


フォンタン一択。


本人の頑張りとか、親の献身的なサポートとか、そんな精神論で二心室にできるなら誰も苦労しないわけですよ。


しつこい?


『純型肺動脈閉鎖183例を解析した報告によると、冠動脈異常は45.8%に認められ 、7.6%は右室依存型冠循環を有していた。』


娘ちゃん、100人に一人の中の100人に一人を引いて、さらにその中の100人に7人(しかも重症)を引いてたよ。


引くなら宝くじを引いておくれ…。


今はフォンタン循環とも冠動脈異常ともバランスよく過ごせていて元気いっぱい。


この論文は静岡こども病院の先生が書いたもの。


もしこれから先娘ちゃんの冠動脈に不具合が出てきたら、セカンドオピニオンは静岡に決定だわ。


友達もいっぱいいるしね。


そんな日が来ないことを切に願う。


以上でーすチュー