【ジャクソンホール(米ワイオミング州)=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は26日の講演で「米雇用が改善し、追加利上げの条件は整ってきた」と述べ、昨年12月に続く利上げに意欲を表明する。同氏は具体的な時期に言及しないものの、9月の次回会合で利上げする可能性も出てきた。米経済は成長率の鈍化も懸念されるが「緩やかな拡大が続く」と評価する。
イエレン氏は各国の中央銀行首脳らが集まる当地での経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演する。FRBは昨年12月に9年半ぶりの利上げに踏み切って以降、追加利上げを8カ月間見送ってきた。米雇用指標が再び持ち直し、英国の欧州連合(EU)離脱問題も落ち着きつつあることから、市場はFRBの追加利上げの時期を再び注視している。
事前に入手した講演テキストで、イエレン氏は「企業の設備投資は弱含んでいるが、家計支出は底堅い拡大が続く」と指摘。4~6月期の実質国内総生産(GDP)は年率1%台と低調だったものの「先行きは雇用回復によって、GDPも緩やかな成長が続くと見込んでいる」と強調した。
その上で金融政策見通しについて「米連邦公開市場委員会(FOMC)は引き続き、緩やかな利上げが適切だと想定している」と表明する。追加利上げの時期には言及しないものの「ここ数カ月、追加利上げの条件は整ってきた」と踏み込んだ。
FRBは9月20~21日に次回のFOMCを開く。金融市場は年内にFRBが利上げする確率を5割程度と見込んでいるが、9月に利上げするとの見方は少なかった。イエレン氏が早期の利上げに意欲を示したことで、基軸通貨ドルなど外国為替市場を中心に金融市場にも影響する可能性がある。
ただイエレン氏は、中長期的な利上げペースは想定以上に緩やかになる可能性も示唆している。経済を冷やさず過熱させない金利水準である「中立金利」が低下しているためで、年内2回、来年は3回を見込む利上げシナリオを下方修正する可能性がある。