チョコレート・ファイター | h

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「チョコレート・ファイター」
今年、劇場で鑑賞した四十本目の映画。
タイの作品。格闘アクションもの。

タイ人マフィアの女と日本人ヤクザの男。
その二人の間に生まれた女の子ゼン。
医者から脳の発達が遅く特別な配慮が必要と言われた。
大きくなっても言葉が覚束ない。感情をコントロールできない。
しかし彼女は、類稀なる才能の持ち主。
鋭い聴力を持ち、耳だけで気配を察知して
飛んでくるボールを一瞥もせず掴み取ることが出来る。
テレビでカンフーアクション等を見れば
その動きをコピーする事が出来る。
天才格闘少女なのだ。

ゼンが大活躍するお話。
ゼンの両親の出会い、ゼンの成長過程、
その能力を発揮して戦うようになるまでの経緯、
そういうものも描かれているけれど、正直、どうでもいい。
見所は兎にも角にもゼンのアクションシーン。
「ゼンの」って言うのはこの場合ちょっと違うかもな。
「ジージャーの」が相応しい。演じてる子の愛称。
この映画の最大のキモは全て本人がやってるということ。
スタントなし。CGなし。ワイヤーなし。(ただし高所での命綱は有)
アクションシーンに使われてるエフェクトは
再生スピードの速い/遅いと、効果音くらいのもん。
あとはガチンコ。あんな可愛い女の子が体張ってる。
ただガチンコやってるだけで見た目ショボけりゃ意味ないが
彼女のアクションといったら、そりゃもう立派で。
よく、大作アクションで主演する俳優なんかが
3ヶ月みっちりトレーニングを積んだとか言うけど
彼女の場合はそんなもんじゃない。4年間。
それもうトレーニングってか修行だろう。

彼女はもともとテコンドーの実力者であるそうだが
でも、あそこまでのアクションは、やはり修行の賜物かと。
ホント凄い。自力でやってるとは信じられない程。
ホント凄い。阿部寛の生尻で受けた衝撃なんて吹っ飛ぶ程。
柔軟性・俊敏性・跳躍力・バランス感覚。素晴らしい。
キレの良い動き・身軽さを生かしたアクション。かっこいい。
ただ一つ残念なのは、あまり強そうには見えないって事。
華奢な子だから、打撃に重みを感じないんだ。
もちろん、強そうに見えない子がやるから意味があるんだし
スリムだからこそのキレ、身軽さなんだろうけど。。。
あの体では、どうしても打撃が軽く見えてしまうから
それで大の男がのされるのは非常に嘘くさく映る。
ファイトというより、演武って印象を受ける。
製作者としても、ここジレンマだったかも知れんなあ。
CG使っちゃえばもっとパワフルに見せられるだろうけど
それやっちゃったら本末転倒なわけで。

いつになく真剣にアクションを見た。
いつになくドキドキし、いつになく感動した。
それは、CGとか使わず生でやってるって知ってるから。
見る者の心持ち一つで、見方は大きく変わるものだ。
普通、アクション見てる時に注意が向くのは
派手さやコンビネーションのユニークさだが
小細工なしに体一つでやってると思って見ると
全体の構成よりも、一つ一つの動きに目がいく。
そして、身体能力の高さに感心する。
スタントなしであんな危ないことやってる!
ワイヤーなしであんなに高く跳んでる!って。
アクションの場面として凄いと感じるのでなく
そのアクションやってるこの人凄い!と感じる。
今やCGやワイヤーの利用が当たり前の映画界。
視聴者は刺激になれてしまい、感動しにくくなってる。
本作にしたって、生って知らなければ同じこと。
もし何を知らずに見てたら
CGでしょ?ワイヤーでしょ?スタントでしょ?
って思ってしまうほどの完成度まで到達しちゃってるんで
逆に「使ってません」って大きく言う事が必要になってくる。
生身って分かって見なければ感動半減だ。

映画の最後には、NG集ならぬKG集があった。
KG(怪我)集。今、勝手に命名した。
体一つでのアクションだから、怪我が多かったみたい。
ここまでのものを撮るには、必要な犠牲なのだろうが、、、
ようやるわ。役者も監督も。
特に監督はちょっと頭おかしいんじゃないかと思った。
だって、もし自分が監督だったら、耐えられんもん。
自分が撮りたい物のために役者が本物の血を流すって。
全てはアクシデントに決まっているけど
怪我人が続出することは予想できてたはずで
そうなるだろうと知りつつ撮影を始めて
何人もの役者が怪我をしても撮影を続けて・・・
役者も怪我すんの覚悟の上でやってんだろうけどさ。
KG集は「マジでやってます」アピールとしては有効だが
自分のような心優しい者は引いてしまうので
無い方が良かったかもな~と思う。


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