「渇き。」 | 土方美雄の日々これ・・・

「渇き。」

まさに、鬼畜映画の極北。「嫌われ松子の一生」「告白」の中島哲也監督の最新作、「渇き。」は、主人公の元刑事の藤島(役所広司)を筆頭に、出て来る登場人物の大半が、ろくでなしか外道、鬼畜という、すさまじい「猛毒」映画だ。

妻の浮気相手を半殺しにして、刑事をやめた藤島は、酒と暴力におぼれる日々を送っていたが、別れた妻からの電話で、2人の間に生まれたひとり娘の加奈子(小松菜奈)が失踪したことを知る。元妻を暴力的にレイプした挙げ句、「オレが娘を必ず見つけ出してやる」と、見当違いの啖呵を切った藤島だったが、娘の交友関係を辿って行けば行くほど、成績優秀にして、容姿端麗、学園きっての人気者という、文字通り、非の打ちどころのない娘の、邪悪にして、穢れた素顔が浮かび上がってくる。藤島は、咆哮する。娘よ、お前はバケモノかッ!!!

とにかく、娘を探せば探すほど、血みどろの抗争に巻き込まれ、まさに全身血まみれ、ゾンビ状態の藤島が、最後にたどり着いた、失踪事件の真相とは???と、まぁ、そういったストーリィ。

娘の加奈子を演じる小松菜奈をはじめ、妻夫木聡にオダギリショー、國村隼、二階堂ふみ、橋下愛、中谷美紀等々、豪華絢爛な登場人物の大半が、何の感情移入も出来ぬ外道揃い。第一、主人公の役所広司からして、すぐに激怒して殴りかかり、女はレイプするという、外道も外道である。本当にひどい映画だが、そんな不毛な暴力の彼方に、主人公が愚かにも夢想するのは、それこそ実現性が1ミリもない、失われた家族の再生だったりするのだから、あまりにも悲しくて、笑えてしまう。

まぁ、そんな映画。美しいヒューマンドラマを観たい方は、くれぐれも、ご覧になりませんように(笑)。