「きいろいゾウ」 | 土方美雄の日々これ・・・

「きいろいゾウ」

本当に、久しぶりの映画。川崎のチネチッタにて、ポイントが5ポイントたまったので、それを使って、観たのです。

西加奈子さんの人気小説の映画化とのことだが、小説は未読。主人公のツマとムコは、田舎の一軒家を借りて(だか、買ってだか、知らないが)住んでいる。ツマは少々変わった女性で、木々や動物の話す声を聞き、会話することが出来る。それは幼いころ、何でも、心臓の病いとかで、長い入院生活をおくっていて、その間に、きいろいゾウとの旅に出て、身につけた「特技」らしい。

映画の前半では、そんなツマと、介護の仕事もしている、それほど売れていない作家のムコとの日常生活が、淡々と描かれ、ちょっと不思議な、しみじみ系の映画なのかなぁ・・と、原作を読んでいない私は、不覚にも、そう思ってしまった。

ところが、ムコの元に、送り手の名前の書かれていない一通の封書が届いたことがきっかけで、物語の様相が、変わり始める。その手紙に、ムコの隠された過去を直感したツマが、変わり始めるのだ。どんなに仲のよい夫婦でも、相手のことをすべて知っている、わけではない。2人の間に生じた亀裂は、次第に拡がり始め・・と、まぁ、そんな話。

孤独に耐えられず、少しずつ、おかしくなっていくツマを、宮﨑あおいが、もの静かな、しかし、渾身の演技で演じ切り、ムコのひめられた過去が明らかになる後半の、私的にいえば、やや陳腐な、まるで絵に描いたような展開を、カバーして、あまりあるリアリティーを、物語に与えている。

ムコは、向井理。その他、柄本明や松原智恵子、濱田龍臣、浅見姫香といった、数少ない、老若の登場人物が、実にいい味を出して、単調になりそうな物語を支えている。

結果としては、ファンタスティックで、しみじみ系の夫婦ものに、結局のところ、着地するのだが、それにしては、結構、シビアでリアルなドラマだ。その最高功労者は、もちろん、宮﨑あおいさん。宮﨑さん、サイコー。監督は、「余命1ヶ月の花嫁」とかをつくった、廣木隆一。

あっ、そうそう、何にでも、ミロをかけてしまう、松原智恵子さんも、サイコーですね(笑)。