ニュー・ワールド | 土方美雄の日々これ・・・

ニュー・ワールド

巨匠といっても、この作品を含め、まだ確か4作くらいしか作品を発表していないテレンス・マリックの、7年ぶりの新作。

17世紀初頭、アメリカにやって来たイギリス人植民者の男(コリン・ファレル)に恋したため、部族から追放され、イギリス人植民者の砦で暮らさなければならなくなった先住民の娘ポカホンタスの、波乱の生涯を描く。異なる二つの文明の衝突が産み出した悲劇を描いた作品と書けば、何やら悲壮感が漂うが、みずみずしい叙情性をたたえた、あたかも一編の「詩」のように美しい作品だ。

大自然の中を走り回り、まさに自然と一体化して自由に生きていたポカホンタスは、その運命の恋と引き替えに、窮屈なイギリス人の服と靴を身にまとい、「人質」同様の暮らしを強いられることになる。それがポカホンタスの幸せにはつながらないと考えた男は死んだと偽り身を引くが、そのことで彼女は廃人同様になってしまう。その彼女を救ったのは、彼女に惹かれ、結婚を申し込んだもうひとりのイギリス人植民者だが、彼女はその申し出を受けるものの、しかし、男をどうしても愛せないでいる。そして、年月が経過して、次第に新しい男を愛し始め、子供も出来たポカホンタスの元に、彼女が愛し続けた男が生きているという報が届く。

イギリスに渡ったポカホンタスは男と再会を果たすが、夫との、情熱的ではないが、静かな暮らしを選択する。しかし、夫と共に新大陸の家に戻ろうとした矢先、彼女は病に倒れ、その生涯を終えてしまうのである。

新たな文明との出会いは、彼女にとって本当に幸せだったのか・・決して声高ではない、静かな問いかけを、この映画は私たちに突きつける。秀作である。