ダニー・マッキャスリンが語るデヴィッド・ボウイ
 
デヴィッド・ボウイの遺作となった『★(Blackstar)』の主要レコーディング・メンバー、ダニー・マッキャスリン、マーク・ジュリアナ、ジェイソン・リンドナー、ティム・ルフェーヴルが来日し、お茶の水の「cafe104.5」でトーク・セッションを行ないました。ボウイとのレコーディングについてのトークは非常に興味深い内容満載!
 
 
彼らの最新作『ビヨンド・ナウ』は『★』のレコーディングを終えて、数ヵ月後にスタートしたそう。
 
「この作品のタイトル曲を録音していた時、何かに似ているなあって思った。デヴィッドと『★』のレコーディングで一緒に演った”ある曲”にインスパイアされた。だけどリリースされた『★』には入ってなかったんだ」(ダニー)
 
でも、それはボウイの70歳の誕生日となるはずだった今年の1月8日に突如リリースされたデジタルEP『No Plan-EP』に収録されていたボウイ最後のレコーディングと言われる3曲の新曲の中の1曲「When I Met You」だったんだそうです。彼は「Since I Met You」と答えていたと思うので、もしかしたら最初のタイトルは「Since I Met You」だったのかもですね。
 

ボウイとのレコーディングについて一人一人こう語っていました。

●ジェイソン:「深い絆で結ばれた、濃密な濃縮された時間だった。トニー(ヴィスコンティ)やケビンとともに、小さなプロダクションチームで、高い能力と高い要求によって僕たちも鍛えられた」

 
●ティム:「ボウイは恐れ知らず。限界を広げていく人」
(ちなみにここではずっと立ってとーくしてたんですが、これは今日日本に着いたばかりで、「ずっと座ってたから、今日は立っていたいんだ(笑)」とのこと。この方はテデスキ・トラックス・バントのベースとしても活動中。先日のTTBの武道館公演でも来ていました)

 
●マーク:「常にお互いの音を真剣に聞きながら・・・大切な時間だった」
(あんなすごいプレイをするのに意外と小さくでびっくり)

 
●ダニー:「ボウイとのレコーディングはものすごい感情的な深みがあった。僕たちのアルバムにもその経験をすべて生かしたかったんだ

 
彼らが『★』に参加したきっかけはマリア・シュナイダー(6月に来日するそうです)。彼女がボウイと一緒に「Sue」を作っていた時、リズムをこうしたいとボウイがいったら、マリアが『Casting For Gravity』を聞かせたそう。
 
「デヴィッドはもっとマリアとやりたかったみたいだけど、マリアは自身のアルバムのレコーディングがあったので、僕らを推薦してくれて、そうしたらデヴィッドが僕らがいつもやってるライヴハウスに見に来てくれたんだ」(ダニー)
 
その後マリアと「Sue」のリハーサルで初めてボウイと会った。そこでボウイからe-mailと電話番号を聞かれ、そうしたら、その日の夜に連絡来たんだそう。ボウイはしっかり彼らのアルバムを聴いていて、「レコーディングしてるとき、デヴィッドは自分たちのアルバムのこのフレーズとかみたいなのが欲しいんだと言ってくれた」んだそう。
 

 
ボウイとのエピソードについては

●トニー:「とっても面白い人だった。ずっと笑ってた。いかに彼を笑わせるか邪魔できるかの得点表をつけるほどね(笑)」

●ジェイソン:「デヴィッド・ボウイがそこで歌っていたんだよ!レコーディングではヴォーカル別録りとかで会わない人もいるのに。彼は必ず演奏のとき、歌ってガイドしてくれた。パッション、ラブとともに僕らと“一緒に”作ってくれたんだ」

●ダニー:「自宅で作ったデモを送ってきて、それをもとにアレンジをしたから、一緒にセッションの中で作っていったわけではないんだ。デモはオーガニックでとても特徴的だった。何が感銘を受けたかと言うと、スタジオでは様々なアレンジを試したんだけど、時には間違ったり、予定と全然違うものになったりすることもある。でも、デヴィッドはそのテイクも全部残していたんだ。想像と異なるものでも残しておいて、そこからまた新たなものが作られることもあった。偉大なミュージシャンのレコーディングはこういうことなのかと。何かが起きる余地、予定外のものが偉大なものになる余地を残していたんだ。
また、
「最初のセッションまでにデモを元にサックス、フルートや自分のできる楽器のいろんなパートアレンジをつくってみた。彼に確認もせずに勝手にね(笑)。でもデヴィッドは許してくれたんだ。本当に僕らに自由にやらせてくれたんだよとのこと。
 

ボウイはジャズを好んで聴いていて、エリック・ドルフィー、チャールズ・ミンガス、ギル・エバンス、チャーリー・パーカーのことをよく話しをしていたんだそう。
 
新作では “A Small Plot Of Land”(『Outside』収録)と” Warszawa”(『LOW』収録)とボウイの曲をカヴァーしている彼ら。2月1日、2日にブルーノートで行われるライヴではこれらだけでなく
「僕らの新作に入ってないデヴィッドの曲もやると思うよ」(ダニー)
とのこと
 
『★』をボウイとともに作りあげていった彼ら。もしボウイが生きていたら、こんなライヴだったのかも?と思わせてくれるかもしれないですね。
 
その他:
*会場の人からの共演したい人は?との質問にマークとダニーは競演したい人はなんと「ブルース・スプリングスティーン」だそう!(マークとダニー)
*ダニーが初めて来日したのは1988年に小曽根真さんとだったそう
 
 

【公演情報】
話題の最新作を携え、自身のグループで初登場 。デヴィッド・ボウイ『★』を支えたキーパーソンが東京に集結!
DONNY McCASLIN GROUP
with MARK GUILIANA, TIM LEFEBVRE, JASON LINDNER

(ダニー・マッキャスリン・グループ with マーク・ジュリアナ、ティム・ルフェーヴル、ジェイソン・リンドナー)
2017 2.1 wed., 2.2 thu. @ブルーノート東京
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:20pm Start9:00pm
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/donny-mccaslin/
※お問合せ : 03-5485-0088
 
MEMBER
ダニー・マッキャスリン(サックス)
マーク・ジュリアナ(ドラムス)
ティム・ルフェーヴル(ベース)
ジェイソン・リンドナー(キーボード)
 
Photo by Takuo Sato
 
●デヴィッド・ボウイ『★』
 
●デヴィッド・ボウイ『No Plan-EP』
 
●ダニー・マッキャスリン『ビヨンド・ナウ』